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セイクリッド・アース  作者: 暁月夜
第2章 初仕事 イクルド村~港町フィールス
9/11

依頼内容

2013.10.15投稿

2013.10.21編集

「―――という事です」

「……で?」

「もー…セイヤさん、聞いてなかったんですかー?」

 イクルド村の広場にある椅子に腰かけたセイヤとマリアは、セレアが見つけた仕事の依頼内容を聞いていた。

 広場の中央には井戸がある。井戸から10メートルほど離れつつ、かつ井戸を囲むように、その椅子はあった。周囲の村民の行動を見る限り、2人が座る岩は、椅子というよりも荷物置きのようだが。

 そしてセレアが一通り依頼内容を話した後のセイヤの反応が前述の通り。そりゃあ、聞いてなかったのかとセレアが聞き返すのも無理は無い。

「聞いてたよ。

 それで? 報酬だよ報酬! これによっちゃ俺、その仕事降りるぜ」

「なぁ~に言ってるんですか!? そんな事言ってちゃあ、路銀なんて溜まりませんよ!」

「はひふんはほぉ~~」

 セイヤのまさかの上から目線の発言に、マリアはセイヤの両頬を引っ張って言い返した。ちなみに、頬を引っ張られながら言ったセイヤのセリフは、「なにすんだよぉ~」である。

「あはは…。まぁ、大丈夫です! 報酬はバッチリですよ!」

 2人を見て苦笑いをしながら、セレアは自信満々に答えた。

「「……で、いくら?」」

 声を合わせて聞き返す2人に、セレアはフゥッと一息つく。そして、右手の人差し指・中指・薬指の3本を立てて言った。

「なんと……、1人あたま、日給3000ウェンです!」

「「え…っえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!??」」

 えっへん! どんなもんだい! とセレアの顔には書いてあった。その目の前で、2人は思わず椅子から立ち上がる。勢いに負け、セイヤが腰かけていた椅子はそのまま後ろに倒れてしまった。いや、倒れたというより、セイヤに押され、向きが少し変わっただけだったが。

 日当3000ウェン。それは予想よりも、かなりの高額である。





 依頼内容は護衛だった。

 この東の大陸イーリアの最も西南にある港町・フィールスに向かう商人のザイギス。フィールスは彼の拠点であり、イクルド村での買い付けが終わったので戻る、というわけだ。そんな彼に同行し、フィールスまでの間、彼と彼の仲間の身の安全を保障する、というモノである。

 マリアの予定では、フィールスの港から船に乗って南の大陸に向かうつもりだった。路銀を稼げて三食付き寝床有りその上目的地は港町、という一石二鳥どころか一石四鳥な依頼である。

 およそ1ヶ月くらいの距離。それを3週間で行くのがザイギスの目標との事。この仕事を取ってきたセレアは絶対無理だと思っていたようだが、ザイギスは、「危険だが近道を知っている。そこから行くので護衛が必要だ」と言っていた。

 結局、報酬が高額なのはそういう理由である。通常の街道を通るのならば、護衛は殆ど必要無い。街道は行きかう人々や荷馬車で溢れているのだから。その人々の中には、当然術者がかなりいる。修業などを兼ねて旅をしている者が多いからだ。たとえ盗賊が出てきても、彼らが倒してしまう。修業を兼ねて。自分の力量を図るために。商人や貴族たちからしたら、彼らは無料で何も言わなくても動いてくれる護衛たちだ。


 そして、『ウェン』というのはこの世界のお金の単位である。ウェンの下にはフォンという単位があり、100フォンで1ウェンである。日本円の1円イコール100ウェンくらいの物価。宿屋はその質によるが、1人1泊大体5ウェン~100ウェンくらい。……この基準で行くと、宿屋には高くても1円で1泊出来て、今回の報酬に至っては、1日30円という計算になってしまう。なんだかとても切ない気持ちになる金額ではあるが、100ウェンが高級宿だと思えば、報酬が高いというのも納得できる…かもしれない?




「へぇ…、君らが今回のボディーガード? まだ子供じゃないか。

 父さんいいのか? こんな子供を護衛として雇って…。しかも3000…。すぐ死んだりしたら、俺達生きてフィールスに帰れないけど?」


 太陽が少し西へ傾き始めた頃。

 宿屋の隣にある荷馬車の倉庫にて。

 依頼人であるザイギスとの顔合わせの時、彼の長男が言った。

 ザイギスの長男は、青いジーンズ生地のようなズボンに白地の半袖シャツを着ていた。シャツの上にはズボンと同じ生地のベストだが、ポケットが沢山あり、収納力に優れているようだ。髪は明るい金髪で後ろはうなじまでと短く、前髪は目にかからない程度の長さになっている。顔立ちは比較的整っている方で、中々の男前である。年齢は20代前半といったところで、身長は180cmくらいだ。

 彼はじろじろとセイヤ達3人を見て、不信感を(あら)わにしていた。そんな彼に、セイヤだけでなく、マリアセレアの姉弟もムッとした表情をしていた。だが、それを強調してはいない。すぐに表情を戻し、笑顔で対応していた。何せ彼は依頼人の息子。文句は控えるのが無難だ。

「大丈夫じゃ。この子らの実力に関しては、保証済みじゃ。セラディーンのな」

 そして依頼人ことザイギスは、年齢50代後半。息子が細身の長身に対し、彼は身長が170cmほどと平均的であるが、体重は明らかに度を超している。体型の所為か、実年齢より10以上上に見られる事も多々あるらしい。髪の色はさっぱりわからない。何せ見事に無いのだから。

「へー、国家承認証持ちか。そりゃ安心」

 軽く納得すると、ザイギスの長男は荷造りの仕上げを始めた。馬車に買い付けた商品を次々と載せ、荷崩れしない様、荷物を紐で荷台に固定していく。手馴れた手つきで、十数箱あった荷物はあっという間に積み込み完了だ。

 そんな中、「承認証!? セラディーン??」と激しい疑問に襲われたセイヤが、口をパクパクさせながら、マリアとセレアに何か言いたげな表情を見せていた。


「わたし達、出身がセラディーン王国なんです」

 セイヤが一体何を言いたいのか察したマリアは、自然と言葉を発していた。

「でも、出身がそうだからって、その、承認証?ってモノが貰えるモノなのか!?」

「えっと…まずは承認証がなんなのか、説明が必要ですよね?」

 その様子だと、とマリアは先を読む。セイヤはこっくりと頷いた。



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