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セイクリッド・アース  作者: 暁月夜
第1章 旅立ち 出逢いの森~イクルド村
6/11

旅の目的地は

2013.09.04投稿

2013.10.10修正

2013.10.15修正

2013.10.21修正

 セイヤが『有り得ない話じゃない』そう言った時、村の入り口が見えた。

 木で出来た簡素な門をくぐり抜け、真っ直ぐ視線を送ると、広場に井戸が見えた。広場を囲むように家が並ぶ。家々の間には、緑豊かな木々や小さめの畑。

 広場周辺から東へ視線を移すと、離れた所にも家が数件並び、大きめの畑がいくつも見えた。広場の西にも家が数件と小川。井戸と並ぶ村の水源と思われる。

 大きいとは言えない、こじんまりした村だが、自然に囲まれ、豊かな村の様だ。


 広場の手前に、周辺の家よりも一回り大きな家屋があった。

「イクルドの村はあそこです」

「そして宿屋はあの家です」

 セレアが指差したのは、その一回り大きな家屋だった。扉には、『宿屋』と書かれた札が掛かっていた。『食堂』と書かれた札もある。当然、こっちの文字だけども。

 それを確認したセイヤは、一息ついて、

「有難う。後はこの村で道を聞いて、地図なり旅の役に立ちそうなものを買って旅するよ。じゃ」

 そう言うと、スタスタ早歩きで宿屋に向かった。

「へ………?」

 気の抜けた声を出したのはセレア。マリアも放心状態に近い。しかしセイヤは構わず歩いていく。コラコラ。

 そして、ハッと我に返ったのはマリアだった。

「ちょっ……と待って下さい!! 冗っ談じゃないですよぉっ!

 こんな中途半端にさよならですか? 冗談じゃない冗談じゃない…! まだ肝心な事を聞いていません! それによって離れるかどうか決めさせて下さい!」

(おいおい…)

 げんなりした顔つきにはなるが、セイヤは構わず歩いていく。

(ったく…あいつらみたいなガキなんか連れて旅出来るかっての。魔物がうろつき回るこの世界で、右も左もわからず旅をするのに、子供の面倒なんかみてらんねぇよ! 第一、俺自身…生きて帰れるかどうかもわかんねーのに……)

 要は、自分の事で手一杯なわけだ。

 セイヤが2人を無視して宿屋に向かっても、2人はその後をついてくる。


 立ち止まらず、ずっとついてきている。


 しばらく歩いて、どうやらセイヤは嫌になったらしい。この状況が。

「………あぁっもう! 肝心な事ってなんだよ肝心な事って!」

 大事な事なので、2回言いました。

 立ち止まり、振り返って2人に聞きました。大事な事なので、ちゃんと2人の顔を見ました。

「――――旅の目的地です」

 仏頂面で、マリアが答える。

「べ、別にそんな事…どうでもいいじゃねーか」

 ま、そうだよな。

「そうでしょうか」

 おやまぁ。マリアにとっては違うらしい。

 ちょっとしどろもどろなセイヤに対し、マリアはキッパリと言い放つ。

「そ、そうでしょうかって………」

「ここは東の大陸イーリアです。その中でもこのイクルド村は最も東南に位置します。

 さ、セイヤさん。あなたの行くべきところはどこですか?」

「え? セント=ソルヴィシス王国……って、あ!」

 勢いに流され、つい目的地を言ってしまう。バカ正直に。嘘もつかず。間抜けだなぁ。

 そしてマリアは更に勢いを増す。

「セント=ソルヴィシス王国!? ほぉらぁ、わたし達と別れて旅するのは無理ですね。何て言ったって、セント=ソルヴィシスっていったら、西の大陸ウェスティスの最北です。旅をするのが初めてってだけでなく、この世界も初めての人では……

 無理です。イーリア内だけで旅をするならともかく、海を渡るんです。勝手がわからないセイヤさんでは無理です。わたし達の力が必要ですっ! 一緒に行きます」

 拳を握りしめ、力一杯言った。

 マリアの勢いにだけでなく、言葉の内容にも、セイヤは困惑している。

(何…? ソルヴィシスがこの大陸じゃ…ナイ…??)

 そう。そうだよ。マリアの言う通り、海を渡らなくてはいけなくて、まさにこのイクルド村と対角線上にあったりするのだ! さあどうする刈谷聖太郎!!

「まさかとは思うけど……」

 一息ついて、

「遠い?」

 セイヤは問う。こっくり頷く2人。

 まさに顔面蒼白なセイヤ。いつ帰れるんだろうねぇ?

「でも、だからと言ってお前達じゃあ……」

 頼り無い、とでも言いたいらしい。

 ――が、マリアがその言葉を遮るかの様に、きつく言う。ちょっとプライドが傷ついた様だ。そりゃそうだな。何も確認せずに決めつけられれば。

「馬鹿にしないで下さい。わたし、旅の経験は幾度と無くあります。そんじょそこらの14歳とは違うんですよ。

 魔物とだって何度対峙して、何度大丈夫だったか。自分の身くらい自分で守れます。

 わたし、魔術士ですから!」

「僕は賢者でーす。 ――ってあ……」

 言ってからセレアは口を手で押さえる。結構この子も間抜け。

「もう、あんたは剣術士か法術士でいいのよ!」

「ご、ごめんなさい姉様…ついっ……」

 こそこそ話しているが、

「丸聞こえだぞ」

 そう。そうだよ。

「え!? そそそそそうですか!?」

「あ、僕、け、剣術士でした。は、はは」

 それはもう誰が見ても嘘とわかるくらいの誤魔化し方。相当焦っている様子。そしてセイヤは考える。何かがある、と。

(おかしい。なんで最初に賢者って言っておきながら訂正する?)

 うんうん。

(賢者だからって別に……―――――! あ。)

「思い出した。祖父さんに聞いた事ある。賢者の事……」



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