昨日の恋人が今日はみんなのヒーロー
氏名する球団はヤクルトスワローズだ。
スカウトの方が、校長室を訪れて、最初の挨拶をしたいということだった。
これから、隆の両親と監督と話しを進めながら、ドラフトを迎えることとなる。
次の日、全校に衝撃が走った。
教室はもう半狂乱というくらいに、騒がしく、祝いで隆を胴上げしてる
野球部のメンバーや、握手しながら喜んでる同級生、
さらには、サインを頼んでる早合点な連中までいた。
その姿を遠くで見ながら、また不安が襲ってくる。
甲子園で一躍学校のヒーローになった隆。
今度は、学校どころか町のヒーローになりそう。
もしこのまま、プロ野球選手になるとしたら、
この県のヒーローになっちゃうよね?
男の子に混じって、話しかけてる女の子達がいる。
そうだよね。
カッコいいって思って好きになっちゃうかもだよね。
彼女のはずのわたしだけど…
私が彼女だって、昨日言ってくれた隆だけど、
もうリセットされちゃったかも…
私は、隆がプロ野球選手になるから好きになった訳でも
告白した訳でもないんだからっ。
ずっと前からなんだからっ。
今頃来てずるいよっ。
思わず心で叫んだ。
隆を見た。というか睨んだ。
なんか戸惑ってる?
わかる。
あんな顔のときの隆は心ここにあらずで、違うこと考えてるときだ。
あっ、目が合った。
た・す・け・て。 って瞳が訴えてる。
ふふふ、わたし彼女だもんね?
よしっと小さく気合をいれてから、
「隆~。 監督が呼んでるらしいよ~」
私はみんなに聞こえるようにかなり大きな声で叫んだ。
『 ああ、わかった。 すぐ行く。』
すぐに返事を返してくれた。
群がる人たちを掻き分け、私の傍に来た、隆は
瞳でアリガトと目配せして、小さく
『ホームルームまで時間つぶしてくる』と言って教室を出て行った。
隆がいなくなったあとも、教室は騒がしいままだ。