私の朴念仁君
幼馴染の突然の言葉。
好き… 隆のことが好き…
「ふ~~っ」
ため息がでる。
ふと、聖雪の泣き顔が浮かんだ。
あのとき、お前もかっ!って思って切なかった。
でも、どうなんだろう?
泣き顔が何かを訴えてる。
聖雪…
おれの…
いやいや、そんなはずは無いだろう?
相手は、幼馴染とはいえ、我が校のマドンナ
小さい頃から親しくはしてもらっているが、
見事なほど美しく艶やかに成長した彼女は
もう、ぶっちぎりで自分の目の前は通り過ぎていっている。
こちとら、たまたま、小学校から好きだった野球に埋没し
高校野球の頂点である甲子園に3年の夏にして初めて出場することが
できて、2回戦で強豪にガッツり負けて帰ってきた平凡な男だ。
甲子園2ホーマーの思い出をこの先の何十年かの人生で暖めて
慎ましい人生を送ろうと思っているのだ。
そう、気のせいだ
ぬか喜びは、あとでつらすぎる…
ありえない、無かったことにしよう…うん。
頭をリセットして日常に戻った。
またも夕方、校舎裏。
あっ、やばいかも…
彼女C組の三輪さんだ。
夏、水泳の時間、男の子の人だかりができる。
そう。 グラマラスというか巨乳というか?
俯いて自分のを見る。
私だってそんなに悪くない…はず。
もう一度、三輪さん。
うっ、負けてるかも、でもスタイルならっ
負けてないわっ!
あっ、話してる?
『ごめんっ』
頭を下げている隆が見える。
そしてしばらくして、
ふっ~
悲しそうな三輪さんが、私の横を気づかずに
通り過ぎていく。
安心したけど、同時に自分とダブってすぐに恐怖に…
とぼとぼと、校舎裏を歩いていく隆の後姿。
八つ当たりの言葉が漏れる。
私のこの前の告白から、なにも変化がない。
声も掛けてくれない…
10年暖めた一世一代の告白なのにぃ~
言い過ぎかな…
もう~なんでわからないの~
どんかん~朴念仁!!
ところで朴念仁ってどういう意味?
ってそんなことどうでもいいのっ
あっあれ、涙でてきちゃった…
隆~、隆~っ すきなの、すきなの~っ
心で叫ぶ。
トイレにとっさに駆け込み、鏡の前で、
嗚咽をもらした。
ホンと、どんだけ私を泣かすわけ~~
冷たい水で顔を洗い、
「もう決めた。直球勝負よ
野球だけに、あのどんかん男に
ストレートど真ん中投げてやる~~。」
隆のことが大好き。
だから彼女にしてほしい。
このフレーズを剛速球で~