カワイ子ちゃんの涙
もうやばい、顔が。
あれから、止まることなく、そして人にわからない様に
俯きながら、家に帰る。
ただいまの声とともに、すぐに二階の自分の部屋に逃げ込む。
ベットに倒れこんだときには、もう限界だった。
泣き声を押さえることができない。
さすがに、おかあさんにバレた。
「聖雪、大丈夫」
やさしく声を掛けられて、
大丈夫と返事する。
大丈夫じゃなさそうだけど…
しばらくして、おかあさんが、ココアを持ってきてくれた。
涙は止まったが、顔はボロボロ…
「こんな質問しかできないけど、
どうしたの? 」ホンとありきたりな母の問いかけ。
ココアに口をつけて、その暖かな香りに
すこしほっとする。
「あのね、今日、さっき、
隆に告白したんだ・・・」
え~
そうなんだ。
お母さんは少し驚いたようだけど、
私が隆のことずっと好きだったことは気付いてたみたいで
それでどうだったの?
と聞いてきた。
泣いてるからね、察しはついてるかな。
「ダメみたい」
「ふられちゃったのかな?」
「たぶん…」
「たぶんって、どういうこと?」
「固まってて、なにも言ってくれなくて、
恐くて逃げてきちゃった。 」
ふふふ・・・
「あら、ごめんなさい。
でも、ちゃんと確かめなくていいの?」
「うん…そうしなきゃって思うけど
やっぱり怖くて…」
今まで気持ちを暖めすぎたために、
答えが怖くてたまらない。
「でも、それじゃ~はじまらないでしょう?
ウジウジしてるだけじゃ」
「わかってるっ」
「隆君て、私も小さい頃から知ってるけど、
正直、恋愛に敏感なイメージ無いけど…
いい意味で、野球バカだし。 」
それはそうだと私も思う。
「それに、隆君が誰かを好きだとか、
誰かと付き合ってるって話し、隆君のお母さんからも
全く聞かないわよ。 」
そういや、ある意味想像つかないな。
隆が饒舌に女の子と話ししてるの。
でも…
「甲子園で活躍したから、最近良く告白されてるし、
かっこいいって言ってる子がいっぱいいるし」
そう、隆は一躍有名人になって、今まで気にしてなかった子も
覗きに来たりしてる・・・
ふ~~ん。 おかあさんが感心してる。
「じゃあ、諦めるってことだ。
チョッと出のほかの女の子にあげちゃうんだ~」
えっ? お母さんを見つめる、いや睨む?
「そんなことっ」
そんなこと? お母さんがゆっくりと言葉を反復する。
嫌だ、ヤダっ
「そんなの嫌っ 」
「じゃ、ハッキリさせるしかないでしょう?
気持ち整理するためにも。」
「う、うん」
自信ないなぁ~
「まぁ、フラレたら慰めてあげるわよ。
それと、美代ちゃん(隆の母)に
よくも私の娘を振ったわね~って、ランチおごって
もらっちゃう!」
な、なにそれ!!
ニコニコしなが言うお母さんをキッと睨みつけ、
隆っ~~とまた心で名前を呼んだ。