マジですか? いやいや、いやいや
やっぱりいた…
今日もいつものところでやっている。
大会が終わって、引退したというのに、
自主練はかかさない。
身体が訛ること自体が嫌いな
根っからのストイックなアスリートだ。
プロなんて思ってもいないが、
社会人野球ができれば。
身体が動くまで、白球を追いかけれれば
そんなうれしいことはないと思っている。
かっこいい…
ドンカンな奴だけど、
女心を全く解ってくれないけど
でも、輝いて見える…
好きなんだからしょうがないじゃないっ!
「おつかれさま」
グランドから戻ってきたところに
声をかける。
『おお、どうした~?』
「うん~ 待ってたの」
『えっ?俺を? 』
「そう、あ・な・た・を」
ふたり一瞬立ち尽くす。
「ちょっと話しがあるの。 いい? 」
『ああ、いいよ。
腹が減ってるから飯食いに行く?』
もう…
「それは、話しのあとでいい?
すぐ終わるから…」
ダメかな~これは…
折れそうな心を奮い立たせる。
校舎裏、もう日が陰っていて、少し肌寒い。
どうした~?
相変わらずの気のない返事。
でも、もう高校生活も半年、長年の思いを伝えるにも
遅すぎるくらい気持ちを暖めてきた。
もう我慢できなくて、心がちぎれそう…
すっと出た。 溢れる言葉
「あたし、隆のことが好き…」
えっ、
声には出てないがそんな表情
そして固まっている。
なんかダメそう。
鈍感な人だし、
思った以上に実はモテテるみたいだし、
他に好きな人、実はいたりして…
短い時間にいっぱい浮かんでくる
ダメな理由。
そして・・・
『 あの、まじですか? 』
なして敬語?
でも、
「本気です。 小さい頃からずっと…」
こっちもなぜか敬語。
『 いやいや、いやいや、』
やっぱり嫌なの?
『いやいやっ、そう言ういやじゃなくて…』
えっどっち?
『いやいや、いやいや。』
また~?
『あー、え~っと、その、なんで?
なんで俺? 』
…だめかな~
無言の私になにか焦ってるみたい。
『なして、お前みたいな、超絶美少女が
俺を好き?
勘違いしてないか?
俺だよ?
俺だよな?
な? 』
「隆に決まってるじゃないっ
間違えるはずないでしょ!」
超絶美少女と言われたことに、
無条件でうれしくなってしまった。
が、喜んでるばやいではない~!
気持ちが伝わっていないことの方がせつない。
ちょっと痛い表情?
『いやいや、 あの、俺、普通なんだけど、
そりゃ、聖雪とは、幼馴染で一番仲良くしてると
思ってるけど…
その、あの、聖雪はその…
いつからか、おれのアイドルみたいな感じになってて、
その、眩しすぎるというか、つりあわないというかなんというか 』
困った顔だ。
「なんで? 隆だってカッコいいよ。
今月だけでも、3人から告白されているのも知ってるよ。
つりあわないなんてないよ。 」
『なして、それを? 』
そんなの好きだからに決まってるじゃないのっ
「気になってしょうがなかったもん。
断ってたって噂で聞いて、何度もホッとしたんだから」
えっ?
また、ビックリ顔。
『聖雪が俺を……』
つぶやくような、独り言のような。
『 俺っ 』
次の言葉が恐くなる。
付き合うどころか、今までの幼馴染の関係すらも失う?
いつのまにか、泣いちゃってる私、やばい・・・
「もういいっ ごめんねっ 」
恐くて恐くて逃げ出した。
あっあっ、聖雪っ
背中で声が聞こえたけど。