なんか変わった?
ゲームセットっ
アンパイヤの声がかかる。
9回裏最後の打者が打ち取られ試合が終わる。
二塁打を打ってセカンド塁上にいた隆蔵は
小さく息を吐いた。
『終わったな。』
ベンチからチームメイトがうな垂れてホームベースの
ところに集合するのに対し、勝利した相手チームは
マウンド上で皆で歓喜して抱き合っている。
その脇をすり抜けるように隆蔵もホームへ向かった。
観客の歓声、一塁側の悲鳴、ため息
騒然としている状況なのだか、隆蔵には
異様に静かに感じた。
次に音を認識したのは、
4対3で横浜学園っという審判の声だった。
お互い礼をして、健闘を称える握手を軽くしてからベンチへ
勝利校の校歌をベンチ前で聞く。
泣いているチームメイトの顔がセピア色に見えた。
隆蔵の高校野球は終わった。
どこをどう対応したのかわからないが、敗戦の談話に応え、
甲子園に程近い宿舎を後にして、自宅に戻った。
母親や親戚から労いの言葉も受けたが、適当に受け流したようだ。
そして、一日が経ち、朝を迎えた。
「あぁ、終わったんだな~。」
不思議と悔しくはない。 やるだけやったという気持ちがあるからだろうか
「隆~っ 起きてる? ごはんは~? 」
下からかーちゃんが叫んでる。
いつもの日常だ。
不思議と笑いが込み上げ、
『 おうっ起きてる。今行く~ 』と元気な声が出た。
今更だが、この物語の主人公ともいえる人物
名前が佐久隆蔵という。
高校球児で夏の甲子園を経験した高校3年生だ。






