最終話:【120万人の先へ】真実の光と、未来への歩み
大祝賀会の狂騒から数日。アスベル公爵領は、これまで以上に眩い活気に満ち溢れていた。
■ 嘘のない領地の景色
街の通りには、帝国が仕掛けた不信感の影など微塵も残っていない。 むしろ「あの騒動」を機に、領民たちの団結力はより強固なものとなった。広場では、エリックが指導する新人兵たちが「誠実な筋肉」を目指して汗を流し、その傍らではカイルたちが、最新の魔導インフラを領内の隅々にまで広げている。
ナオが管理する配信システムは、今や王国の公的な広報基盤として認められつつあった。 「レナード様、本日も全域の物流・魔力供給ともに異常なしです。……それと、日本の皆様からのギフト総額で、新しい孤児院の噴水が完成しましたわ」 窓の外に広がる、嘘のない、自分たちの汗と視聴者の支えで作り上げた景色。レナードはそれを愛おしそうに眺めた。
■ 父への報告
その日の午後、レナードは独り、高台にある亡き父――先代アスベル公爵の墓を訪れた。
「……父上。なんとか、この領地を守り抜きました」
墓石の前に供えたのは、一輪の花と、最新の魔導通信端末だ。 「父上の時代にはなかった『配信』という魔法のような力が、僕を助けてくれました。多くの人に僕たちの毎日を見てもらうこと……。それは、想像以上に孤独で、そして想像を絶するほど温かいものでした」
かつて、父が守り抜こうとしたこの領地。 レナードは自分なりのやり方で、その遺志を継いだのだ。 「これからも、僕はこの地を『透明な誠実さ』で満たしていきます。……見ていてください」
■ 共に歩む背中
「レナード、ここにいましたのね」
聞き覚えのある、凛とした声が響く。振り返ると、夕日に照らされたリディアが立っていた。 彼女の肩には、今日も「配信中」を示す小さな魔導カメラが浮遊している。
「リディア。……また配信を回しているのか?」 「当然ですわ。今日の晩餐は、私が腕によりをかけた『特製肉料理』なのですから。120万人の目撃者の前で、あなたがそれを完食するところを記録に残さなくてはなりません」
彼女の不器用な、けれど真っ直ぐな愛情。 レナードは苦笑しながら、その差し出された手を取った。
「ああ、分かっている。君の作る料理なら、どんな爆発が起きても僕は逃げないよ」 「あら、失礼ですわね。今日は爆発いたしませんわ。……たぶん」
二人は並んで、夕焼けに染まる領地を見下ろしながら歩き出す。 かつて「無能」と蔑まれた少年の物語は、一人の少女との出会いと、120万人の見守る「配信」という絆によって、誰も見たことのない奇跡の軌跡を描いた。
【日本配信画面】 コメント:レナード、本当にお疲れ様! コメント:リディア様、末永くお幸せに!! コメント:最後はやっぱり飯回かよwww 最高だわ! コメント:俺たちのギフトがこの景色の一部になってると思うと、胸熱だな……。
画面を埋め尽くす祝福のコメント。 レナードはカメラに向かって、今日一番の「誠実な笑顔」を見せた。
「――皆様、ご視聴ありがとうございました。僕たちの日常は、これからも続いていきます」
魔導水晶の光が静かに収束し、物語はひとつの「真実」として、世界に刻まれた。
(完)




