表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/87

最終話:【120万人の先へ】真実の光と、未来への歩み


 大祝賀会の狂騒から数日。アスベル公爵領は、これまで以上に眩い活気に満ち溢れていた。


■ 嘘のない領地の景色

 街の通りには、帝国が仕掛けた不信感の影など微塵も残っていない。  むしろ「あの騒動」を機に、領民たちの団結力はより強固なものとなった。広場では、エリックが指導する新人兵たちが「誠実な筋肉」を目指して汗を流し、その傍らではカイルたちが、最新の魔導インフラを領内の隅々にまで広げている。


 ナオが管理する配信システムは、今や王国の公的な広報基盤として認められつつあった。 「レナード様、本日も全域の物流・魔力供給ともに異常なしです。……それと、日本の皆様からのギフト総額で、新しい孤児院の噴水が完成しましたわ」    窓の外に広がる、嘘のない、自分たちの汗と視聴者の支えで作り上げた景色。レナードはそれを愛おしそうに眺めた。


■ 父への報告

 その日の午後、レナードは独り、高台にある亡き父――先代アスベル公爵の墓を訪れた。


「……父上。なんとか、この領地を守り抜きました」


 墓石の前に供えたのは、一輪の花と、最新の魔導通信端末だ。 「父上の時代にはなかった『配信』という魔法のような力が、僕を助けてくれました。多くの人に僕たちの毎日を見てもらうこと……。それは、想像以上に孤独で、そして想像を絶するほど温かいものでした」


 かつて、父が守り抜こうとしたこの領地。  レナードは自分なりのやり方で、その遺志を継いだのだ。 「これからも、僕はこの地を『透明な誠実さ』で満たしていきます。……見ていてください」


■ 共に歩む背中

「レナード、ここにいましたのね」


 聞き覚えのある、凛とした声が響く。振り返ると、夕日に照らされたリディアが立っていた。  彼女の肩には、今日も「配信中」を示す小さな魔導カメラが浮遊している。


「リディア。……また配信を回しているのか?」 「当然ですわ。今日の晩餐は、私が腕によりをかけた『特製肉料理』なのですから。120万人の目撃者の前で、あなたがそれを完食するところを記録に残さなくてはなりません」


 彼女の不器用な、けれど真っ直ぐな愛情。  レナードは苦笑しながら、その差し出された手を取った。


「ああ、分かっている。君の作る料理なら、どんな爆発が起きても僕は逃げないよ」 「あら、失礼ですわね。今日は爆発いたしませんわ。……たぶん」


 二人は並んで、夕焼けに染まる領地を見下ろしながら歩き出す。    かつて「無能」と蔑まれた少年の物語は、一人の少女との出会いと、120万人の見守る「配信」という絆によって、誰も見たことのない奇跡の軌跡を描いた。


 【日本配信画面】  コメント:レナード、本当にお疲れ様!  コメント:リディア様、末永くお幸せに!!  コメント:最後はやっぱり飯回かよwww 最高だわ!  コメント:俺たちのギフトがこの景色の一部になってると思うと、胸熱だな……。


 画面を埋め尽くす祝福のコメント。  レナードはカメラに向かって、今日一番の「誠実な笑顔」を見せた。


「――皆様、ご視聴ありがとうございました。僕たちの日常は、これからも続いていきます」


 魔導水晶の光が静かに収束し、物語はひとつの「真実」として、世界に刻まれた。


(完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ