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74話:【神回】120万人突破・大祝賀会! ――不誠実な野菜(ピーマン)を添えないで


 「――皆様、お待たせいたしました! アスベル公爵領、120万人突破記念・大祝賀会の生中継です!」


 ナオの弾むような声と共に、魔導カメラが会場を鮮やかに映し出した。  場所はアスベル公爵領のメイン広場。数日前の緊迫した包囲網が嘘のように、そこには領民たちと、救出された本物の宰相バルガスが並び、平和な熱気に包まれていた。


■ 120万人の祝福

 画面端の同接数は、祝賀会開始と同時に再び100万を突破。  改ざん映像に惑わされたことを詫びるコメントや、「お帰りなさい!」という温かい言葉、そして勝利を祝うギフトが、夜空の打ち上げ花火を隠すほどの勢いで画面を埋め尽くしていく。


【日本の掲示板】 500:名無しの軍師 キターーー! 全員揃っての飯動画こそアスベル領よ! 501:名無しの軍師 見てくれ、中央のテーブル。 宰相閣下がレナードの隣で、めちゃくちゃいい笑顔で「肉」を食ってるぞww 502:名無しの軍師 ギフト「特盛り赤身ステーキ(100,000円)」が贈られました! 閣下、今日は好きなだけ食ってください! ピーマンは一切入ってませんから!


■ 誠実な肉、不誠実な野菜

 「レナード殿! 改めて礼を言わせてくれ」  宰相バルガスが、脂の乗った肉を豪快に頬張りながら立ち上がった。


「私が監禁されている間、私の『誠実さ』を……すなわち、私の『筋肉愛』と『ピーマンへの憎悪』を信じ抜き、偽物を暴いてくれた君の機転には、私の『看破』も脱帽するばかりだ!」


 「いえ、閣下。あれは閣下の生き様があまりに強烈だったからこそ、視聴者の皆さんが覚えていてくれたんです」  レナードが苦笑いしながら答えると、宰相は満足げに頷き、ふとテーブルの隅にある「緑色の物体」に目を留めた。


「……む。レナード殿、これは何だ? この……艶やかで、見るからに不誠実な緑の空洞は……」


 会場に緊張が走る。  それは、リディアが料理の彩りとして、うっかり添えてしまった一切れのピーマンだった。


「……ッ!? し、失礼いたしました閣下! 今すぐ撤去を!」  ナオが慌てて皿を下げようとしたが、宰相はそれを手で制した。


「待て。……私は嘘をつけぬ。この野菜は、私にとっては魂を汚す魔王の欠片も同然だ。だが……!」  宰相はカメラを真っ直ぐに見据えた。 「この不誠実な野菜が、巡り巡って私の潔白を証明する『罠』となり、この国を救ったのも事実。……今日だけは、この苦い真実を、不誠実なまま眺めておくとしよう」


 「閣下、意外と寛大ですね……」とレナードが漏らすと、「勘違いするな。食べるのは死んでも御免だ!」と即答し、会場は爆笑に包まれた。


■ 宴のクライマックス

 宴が最高潮に達した頃、レナードはカメラに向かって杯を掲げた。


「120万人のみんな。君たちの『目』が、僕たちの歩んできた道を真実にしてくれました。……どれだけ世界を書き換えようとする敵が現れても、僕たちの毎日をずっと見てくれている君たちがいる限り、僕たちは負けません」


 リディアが「私も肉を焼きますわ!」と、喜びのあまり魔力を暴走させ、巨大な火柱を上げる。  ナオが「また修繕費が……!」と頭を抱え、宰相がそれを見ながら「良い広背筋の動きだ!」と拍手を送る。


 画面は、そんな最高に「不器用で誠実な日常」を映し出し、温かいコメントの嵐の中で幕を閉じた。

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