表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/87

第73話:【決戦】120万人の連立裁判 ――偽りの「誠実」を暴け


 「――王都の民よ、そして他領の諸侯よ。騙されてはいけない」


 王都の全広場を占拠した魔導水晶の画面。そこに映し出されたレナードは、絶望的な包囲網の中にありながら、かつてないほど穏やかな表情を浮かべていた。


 王宮のバルコニーでは、偽の宰相ヴァルガスが毅然とした態度で民衆に呼びかけている。 「アスベル公爵! 往苦しいぞ! 貴殿が『配信』という邪法で民を惑わしてきた証拠は、既に我が国の歴史アーカイブに刻まれているのだ!」


 対するレナードは、ふっと憐れみすら感じる笑みを浮かべ、画面越しに「偽の宰相」を見据えた。


「……宰相閣下。あなたは先ほどから『アーカイブ』を盾に、私の過去を断罪する。……では、一つお聞きしたい。かつて二人きりで語り合った『あの約束』を覚えていますか?」


「……何だと?」


「あなたがアスベル領を訪れた際、監視カメラの死角になる裏庭で、私の手を取り、情熱的にこう言ったではありませんか。……**『レナード殿。世界が平和になった暁には、私の愛する“あの美少女”の初恋の話を、特製ピーマン料理を囲んで朝まで語り合おう』**と」


 ヴァルガスは一瞬、絶句した。  (……くっ、この若造。ここで『そんな約束はしていない』と言えば、民衆に不誠実だと思われる。誠実さの鏡と言われる宰相なら、ここは寛大な心で話を合わせておくのが正解か……!)


「……あ、ああ! 覚えているとも! あの時、私は確かにそう言った! 美しい少女との未来を、健康に良いピーマンを食しながら語り合いたいと切に願ったものだ!」


 ヴァルガスが慈愛に満ちた表情で頷いた、その瞬間。  王都の広場が、そして日本の掲示板が、宇宙規模の爆笑とツッコミの渦に叩き落とされた。


■ 日本の掲示板:【速報】犯人、閣下の逆鱗と性癖を完全無視www

430:名無しの軍師

アカンwwwww 釣られたwwwwww


431:名無しの軍師

おい偽物! 勉強不足にも程があるだろ!

宰相閣下といえば、王国全土で有名な**「ガチの筋肉(男色)愛好家」かつ「不誠実なピーマン断固拒否派」**だろーが!


432:名無しの軍師

伝説の配信を見ろ! 閣下はあまりに誠実すぎて、

「私は嘘をつけぬ! 女に興味はない! 黄金色の筋肉を愛でるのが私の正義だ!」

「ピーマンを健康にいいと嘘をついて食わせる風潮は不誠実の極みだ!」 って全世界にカミングアウトした漢だぞwww


433:名無しの軍師

その閣下が「美少女」と「ピーマン」に食いつくわけねーだろwww 偽宰相、必死に「普通に良い人」を演じようとしたせいで、本物の「突き抜けた変態的誠実さ」を再現しきれなかったなwww


■ 120万人の「断罪」

「……残念です、閣下。本物の宰相閣下なら、今の私の問いかけに対し、たとえ国が滅びようとも、 『レナード殿! 私は乙女の恋路など欠片も興味がない! そしてピーマンを食うくらいなら私は死を選ぶ! 私の誠実さを侮辱するな!』 と、誇り高く叫んだはずです」


 レナードが合図を出すと、王都のモニターには、日本の特定班が指摘した「パンチラ少女の背景にあるカメラの矛盾」と共に、以前、宰相が**「人は、自分を偽ると腐る。


私は自分の性癖もピーマン嫌いも、全てをさらけ出す!」**と熱弁を振るうアーカイブ映像が並べて表示された。


「……あなたは完璧に『宰相』を演じようとしましたが、彼の**『自分にすら嘘をつけない真っ直ぐな誠実さ』**までは、改ざんしきれなかった。……民衆の皆さん! 今、目の前で『女の子とピーマンが好きだ』なんて嘘を吐いている男と、私たちが毎日流してきた、この泥臭くも正直な『生放送』……どちらが本物か、もはや明白ですね?」


 王都の民衆も、あまりに有名な宰相の「清々しすぎる性癖と偏食」との食い違いに、「あ、これ偽物だわ」と完全に確信した。  


同接120万人の「大爆笑」という名のエネルギーが、ヴァルガスの『改ざん』を支える魔力供給を、笑い飛ばすかのように遮断していく。


「ぐ、あああああッ!! なぜだ! 性癖と野菜ごときで、私の完璧な歴史がぁぁッ!!」


 ヴァルガスの姿が陽炎のように崩れ、醜悪な帝国の工作員が姿を晒した。


「……捕まえろ!! ピーマン嫌いを貫く、本物の宰相閣下の名誉のために!!」


■ エピローグ

 救出された本物の宰相は、縄を解かれるなり、全力でレナードに詰め寄った。


「レナード殿! 偽物を暴くためとはいえ、私にピーマンを食わせようとするとは……君は私を殺す気か! だが、私の『誠実さ』を信じてくれたことには感謝する! さあ、ハグしよう!」


「……閣下、近いです。あと、まだ配信中ですから服を着てください」


 同接120万人の画面には、戻ってきた日常の象徴として、**「筋肉を躍動させながらピーマンの不当性を訴える、誠実すぎる宰相」**の姿が映し出された。  


帝国が仕掛けた「情報の闇」は、一人の男の突き抜けた誠実さによって、完全に笑いへと昇華されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ