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68話:参謀復活祭! ――戦慄のケーキと軍人たちの受難

 ナオが職務に復帰した日の夜。公爵邸の大ホールでは、レナードの呼びかけで「ナオ・快気祝いパーティ」が開催されていた。

 会場には、普段は領地の守りや訓練に明け暮れている軍人たちも顔を揃えている。重装歩兵部隊を率いるエリック、斥候隊のセラとミラの双子、そして巨漢のブルカンと寡黙なアル。

「ナオ殿、貴殿が倒れたと聞いた時は、我が盾を砕かれたような思いであった。復活、心より祝う!」

 エリックが銀杯を掲げると、ブルカンがガハハと笑って背中を叩く。

「ナオ様がいねえと、俺たちは飯の計算もできねえからな! 本当に助かったぜ!」

 ナオは少し照れくさそうに、だがいつもの冷静な口調で応えた。

「皆様、ご迷惑をおかけしました。明日からは、さらに効率的な訓練メニューを組んでありますので、覚悟しておいてくださいね」

「「……えっ」」

 軍人たちに一瞬、戦慄が走る。

■ 恐怖のメインディッシュ:リディアの「努力の結晶」

 だが、本当の恐怖はその後だった。

「ナオ、おめでとう! 私、今度こそ『優しく』作ったのよ。特製の快気祝いケーキを!」

 リディアが満面の笑みで運んできたのは、見た目こそ可愛らしいデコレーションケーキ。しかし、それを見たレナードは、日本側のコメント欄の警告で冷や汗をかいた。

【日本配信画面】

コメント:待て、あのケーキ、自重で皿が沈んでないか?

コメント:リディア様、生クリームを「超高圧」でホイップしただろww

コメント:セラとミラが、本能的に逃走経路を確認してるぞ。

「さあ、まずは軍の皆さんに食べてほしいわ!」

 リディアが切り分けた一切れを、最年長のエリックに差し出す。

「……はっ。剣聖殿の直々の手料理、辞退するは武人の恥!」

 エリックは覚悟を決め、フォークを突き立てようとした。――だが。

『カィィィィン!!』

 金属音がホールに響き渡った。フォークがケーキの表面に弾かれ、エリックの腕が痺れで震えている。

「な、何だこの強度は……!? ケーキというより、魔導合金の塊のようだ……!」

「あら、おかしいわね? 卵を『優しく』5000回ほど高速撹拌しただけなのに」

■ チーム・アスベルの宴

「……貸しなさい」

 見かねたナオが、自分の鞄から細いワイヤー(測量用)を取り出した。

「リディア様。このケーキは『切る』のではなく『切断スライス』すべき物件です」

 ナオが手際よくワイヤーでケーキを切り分けると(火花が散った)、セラとミラが恐る恐る口に運ぶ。

「……あ、甘い。けど、噛みごたえがすごい」

「……うん。一度噛むごとに、顎が鍛えられる感じがする」

 双子の感想に、アルが黙々と頷きながら「高密度エネルギー摂取……」と呟く。

 リディアの破壊的な女子力、軍人たちの不器用な祝辞、そしてそれを冷静に捌くナオ。

「レナード様」

 ナオがそっとレナードの隣に立った。

「私が倒れた間、リディア様や彼らが現場を守ってくれたと聞きました。……私一人の力で回していた頃より、今の方がずっと、この領地は『強く』感じます」

「ああ。お前が休んでくれたおかげで、みんなの『自立心』に火がついたよ。……でも、二度と無理はするな。お前がいないと、俺の胃袋(リディアの料理)が持たない」

 レナードの冗談に、ナオは今日一番の柔らかい笑みを浮かべた。

■ 日本の掲示板:【大団円】ナオちゃん復活おめでとう!

360:名無しの軍師

軍人衆、いいキャラしてるわ。エリックの「武士道(物理)」が泣ける。

361:名無しの軍師

アル、あの硬いケーキを無表情で完食してて草。

362:名無しの軍師

ナオちゃんが笑ってるの見て安心した。

さあ、宴が終わったら次は「教育された超人軍団」の初陣か?

 夜は更けていく。

 明日からは再び、急速発展の荒波が始まる。だが、今の彼らなら、どんな歪みも笑って跳ね返せるはずだ。

 しかし、その宴の喧騒を、遠く離れた国境付近で不気味に見つめる瞳があった。

 「平和の防壁」と名付けられたアスベル領の真実を探るべく、ついに隣国(帝国)の精鋭スパイが動き出していた。

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