表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/87

第59話:実践! ダンジョン攻略チュートリアル

領地北部に位置する『凍てつく廃坑』。かつては良質な鉄鉱石を産出していたが、今では魔物の巣窟となり、巨大な岩で封鎖されていた。  


その門前で、レナードは不可視の配信カメラに向かって語りかける。


「みんな、見ててくれ。資源が足りないなら、自分たちで獲りに行けばいい。今日はエリックの部隊と一緒に、魔物の倒し方を『解説』する」


 背後には、騎士エリック率いる重装歩兵部隊が控えている。だが、今日の彼らはいつもの大層な全身鎧を脱ぎ捨て、領民でも手に入るような皮鎧と、標準的な盾、そして簡素な剣という「軽装」だった。


『シオンの広報放送(アスベル放送局)を開始します。全街頭モニター、接続完了!』


 ナオの冷静な声と共に、街中のモニターにレナードたちの姿が映し出された。酒場や広場で作業の手を止めた領民たちが、固唾を飲んで画面を見守る。


■ 「怖くない」魔物討伐

 洞窟に入ると、すぐに巨大な牙を持つ『ケーブ・ウルフ』の群れが現れた。普通なら、一般人は腰を抜かして逃げ出す魔物だ。


「いいか、みんな。魔物は怖くない。まずは一斉強化レギオン・ブレスを感じてくれ。体の反応がいつもより速いはずだ」


 レナードの指示で、エリックが一歩前に出る。 「盾の構えはこうだ。力で押さえつけるんじゃない。衝撃を逃がすように、少し角度をつけろ。……ほら、簡単だろう?」


 エリックが最小限の動きでウルフの突進を盾で受け流す。無駄のない動きは、まるで熟練の職人の手仕事のようだ。


「次は攻撃だ。無闇に振り回すな。魔物が飛びかかってきた『隙』を突くだけでいい。……エリック、見せてやれ」


 エリックは剣を振りかぶらず、最短距離で突きを放った。一斉強化によって引き上げられた身体能力は、軽装であっても魔物の急所を正確に、そして深く貫く。


「すごい……騎士様たちが、まるでダンスを踊っているみたいだ……」 「あれなら、俺たちでも落ち着けばできるんじゃないか?」  モニター越しの領民たちから、驚きの声が漏れる。


■ 日本の掲示板:【攻略】エリックの「丁寧な魔物教室」はじまった【初心者歓迎】

270:名無しの軍師 エリックさん、教え方うめえww 「盾を少し斜めにするだけ」とか、具体的で分かりやすいわ。


271:名無しの軍師 レナードが横で「ナイスパリィ!」とか解説してるのもいいな。 これ、実戦っていうか、ガチの「攻略動画配信」だろ。


272:名無しの軍師 重装歩兵があえて軽装なのが効いてるな。 「特別な装備がなくても、加護があれば戦える」ってことを身をもって証明してる。 見てる領民たちの目が、だんだん「恐怖」から「獲物を狙う目」に変わってきてるぞ。


273:名無しの軍師


272 ナオちゃんが画面の隅に「魔物の解体チャート」をテロップで出してるw 討伐から素材回収までをセットで教えるとか、徹底してんなぁ。


■ 資源の山へ

 最深部にたどり着いたレナードたちは、巨大な魔石を背負った『ストーンゴーレム』を鮮やかに仕留めてみせた。  崩れ落ちたゴーレムの背後には、かつて掘り残された最高純度の鉄鉱石と、建材に最適な魔導石が壁一面に輝いていた。


「エリック、よくやった。……領民のみんな、聞いたか! ここにある資源は、俺たち全員のものだ!」


 レナードはカメラを指差した。

「明日からは、希望者にこの攻略セット(軽装装備)を貸し出す。部隊の奴らがガイドとして同行する。自分たちの家を作るための石を、自分たちの手で獲りに行こうぜ!」


 その瞬間、街中の酒場から、地鳴りのような歓声が上がった。  魔物への恐怖は消え、自分たちの手で「豊かな未来」を掴み取れるという高揚感が、アスベル領全体を包み込んだ。


 隣で静かに中継を管理していたナオが、小さな声でレナードに告げた。 「……レナード様。明日の『入山希望者』の登録数、既にカイル殿の想定を超えそうですわ」


 レナードは、画面の向こうで盛り上がる「軍師」たちに、満足げにウィンクしてみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ