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第4話:世界初「ダンジョン攻略Wiki」の生中継

公爵家からの次なる試練は、領内にある「深緑の迷宮」の調査だった。  


かつては貴重な魔石の産地として潤っていた場所だが、近年の魔物増殖と複雑な迷宮構造のせいで、探索者の死者が続出。


「死の迷宮」と化したそこは、今や領地の経済を圧迫する負の遺産となっていた。


「レナード様、準備は整いました」  


リヴィアが騎士服の革ベルトを締め、剣を佩く。


その横では、父・バルトロが不安そうに中継用の水晶を見つめていた。


「よし。今回は王都、そして我が領内、さらに――画面の向こう(日本)へ同時配信だ」


 レナードは1,000ポイントを消費し、新機能『マルチ・レイヤー実況』を発動した。


日本配信画面  

コメント:新エリア「深緑の迷宮」キター!  

コメント:今回は攻略配信かw RPGのRTAリアルタイムアタックみたいでワクワクする。


領内配信画面(魔力水晶)  

コメント:あんな呪われた場所を映してどうするんだ?  

コメント:探索者が何人も行方不明になってるんだぞ。自殺行為だ。


「皆、注目してほしい。この迷宮が『死の場所』なのは、情報が足りないからだ。今から僕たちが、すべての正解を書き込む(……いや、配信する)」


 レナードは自由視点カメラを迷宮の奥へと先行させた。  


通常、探索者は松明の届く範囲しか見えない。

だが、レナードの視点は壁を透過し、天井の隙間から階下を覗き見る。


「リヴィア、三メートル先の床、左から二枚目のタイルは踏まないで。踏むと右壁から毒矢が出る。……それと、その先の角を曲がった天井に、擬態した『影蜘蛛』が三匹」


「了解しました!」  


リヴィアは踊るような足取りでトラップを回避し、天井へ向かって抜刀。姿を現す前に蜘蛛を両断した。


日本配信画面  

コメント:透視チート乙www  

コメント:今の蜘蛛の倒し方、フレーム単位で完璧だったな。


領内配信画面(魔力水晶)  

コメント:な……!? 今、蜘蛛が動く前に斬ったぞ!?  

コメント:あのタイルの仕掛け、俺の仲間が死んだやつだ……。そうか、あそこがスイッチだったのか!


 レナードはさらにLPライブポイントを使い、映像に「強調エフェクト」を重ねた。  


安全なルートを青く光らせ、魔物の弱点(核)を赤く点滅させる。


「領内の探索者諸君、よく見ておいてくれ。この迷宮の魔石は、この『核』を狙えば一撃で手に入る。……ほら、こうやってね」


リヴィアが赤い光を目印に、ボスの大百足の眉間を貫く。  


断末魔と共に、巨大な魔石が転がり落ちた。


「攻略情報はすべて記録した。この映像のアーカイブは、領都の広場でいつでも見られるようにしておく。……さあ、安全は保証した。稼ぎたい奴から迷宮へ入れ!」


 配信が終わるや否や、領内に劇的な変化が訪れた。  


「死の迷宮」を恐れていた探索者たちが、中継で見た「正解」をなぞるように次々と迷宮へ突入したのだ。


「若旦那! 大変です! 迷宮から引き揚げられた魔石の納品数が、これまでの百倍を超えました!」  老執事が叫ぶ。


 安全に、かつ効率的に資源が回収される「攻略情報の共有」。  


レナードが作ったのは、単なる動画ではない。この世界における**『生きた攻略Wiki』**だった。


数日後。領内には魔石を買い付ける商人が溢れ、止まっていた物流が激流となって回り始めた。


「……信じられん。武力で制圧するのではなく、知識を配ることで迷宮を支配したというのか」  


王都の私邸で水晶を見ていたローゼス公爵は、戦慄していた。

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