第51話:一夜城、石と魔導の融合都市
カイルは有能だった。レナードから「プレハブ」の概念を聞き出すやいなや、即座に旧ボナパルト領北部の広大な平野を造成地に選定。
わずか一日で、そこは秩序だった巨大な建設現場へと変貌していた。
「カイル殿、これでは……」
視察に訪れた老執事が、広大な敷地に整然と並べられた大量の石材を見て困惑の声を上げた。その石材は、どれも寸分狂わぬ同じ形、同じ大きさで切り出されている。
「ご安心を、執事殿。これは『規格化』された建材です」
カイルは自信に満ちた笑みを浮かべ、空に目をやった。
そこには、バラムの工房で開発された**「魔導ドクレーン」**が、巨大な石材ブロックを軽々と掴み、まるで意思を持っているかのように建設現場へと運んでいる。
「これまでの石積みは、職人が一つ一つ加工し、積み上げる熟練の技を必要としました。しかし、魔導加工で完璧に規格化されたこの石材ならば、現場では『組み立てるだけ』で済みます。そして、この骨組みには……」
カイルが指差す先には、既に数棟の建物の骨組みが完成していた。
それは、バラムの工房で大量生産された、軽量かつ圧倒的な強度を誇る**「強化魔導フレーム」**だ。
レナードの指示により、視聴者から送られた「H型鋼」の概念が、この異世界で魔導技術と融合し、進化を遂げていた。
「レナード様が示された『プレハブ』という概念は、この世界の建築を根底から覆すものです。我々は、もはや個々の職人の腕に頼る必要はない。工場で大量生産し、現場で迅速に組み立てる。これこそが、数万の民を救う最速にして最強の工法です!」
建設現場では、アスベル兵たちが慣れない手つきながらも、カイルの指示の下、規格化された石材ブロックを積み重ねていく。
一つ一つのブロックには魔導接着剤が塗布されており、重ねるだけで瞬時に強固な壁となる。
その光景は、まさにシミュレーションゲームの建設モードだ。
■ 日本の掲示板:【速報】カイル建築官、異世界に一夜城を建てる【SimCity超えた】
150:名無しの軍師
うおおおおお、カイルがやったあああああ!!
魔導ドローンで石材運んでる! H型鋼が魔導フレームになってる!
151:名無しの軍師
これもう俺らが送った「魔導クレーン」とか「魔導ブルドーザー」の設計図、全部反映されてるだろw
バラムとカイルのタッグ、有能すぎて怖い。
152:名無しの軍師
【現在のアスベル公爵領北部】
一日目:平野
二日目:整地と骨組み完成
三日目:壁と屋根、住宅街が形成され始める←今ココ!
153:名無しの軍師
いや、これ本当に数万の難民全員に家が建つぞ。
しかも、強度的に魔物の襲撃にも耐えられるレベルとか。
アスベル公爵領、マジで「住むだけで人生イージーモード」じゃん。
154:名無しの軍師
レナード、本当に良い人材を見つけてきたな。
あのオーディション配信は、歴代トップクラスに神回だったと改めて実感。
広報のシオンが「アスベルは安全で豊かな場所!」って歌い出したら、難民も殺到するぞこれ。
日が傾き始めた頃、広大な平野には、すでに数百もの真新しい家屋が姿を現していた。それは、これまでこの世界には存在しなかった、機能的で堅牢な「魔導プレハブ都市」の誕生だった。
「レナード様……見事に……」
その光景を目の当たりにしたミゲルが、感極まった声で呟いた。
レナードは、満足げに頷いた。
「これは始まりに過ぎない。冬が来る前に、全ての難民に暖かい家を。そして、この都市が、新しい時代の希望となるのだ」
空に映し出された配信画面には、瞬く間に建設されていく都市の様子と、祝福のコメント、そして「アスベル公爵領」の新しい地図が描かれ、視聴者たちはその未来に胸を躍らせていた。




