50話:【放送事故】王国宰相に10の質問! ――筋肉と誠実の向こう側
レナードのアスベル公爵領主就任。その祝賀会の席に、王国の重鎮・宰相バルガスが訪れていた。
威厳に満ちた彼を前に、レナードは領民と視聴者(日本側)に彼の「人となり」を知ってもらうため、即興の生放送企画「宰相に聞く10の質問」を提案した。
「閣下、就任のお祝いに駆けつけてくださり光栄です。よろしければ、私の『配信』で、閣下の誠実なお姿を皆様に披露させていただけないでしょうか?」
「ふむ、面白い。祝いの席だ。王国の顔としてぜひよろしく頼もう」
生真面目な彼を招いての「10の質問」コーナー。レナードは、形式的な回答が返ってくると予想していた。だが、宰相の口から飛び出したのは、王国の常識を揺るがす「衝撃の真実」だった。
■ 質問1:休日の過ごし方は?
「……ふむ。近衛騎士団の訓練施設を訪れ、若き騎士たちの汗に濡れた黄金色の筋肉を、遠くから一日中眺めている。 それが至福の時だ」
スタジオに戦慄が走った。
レナードは引きつった笑顔で「え、えーと……それは、指導の一環として……?」とフォローを入れるが、宰相は真顔で首を振った。
「いいや。純粋な鑑賞だ。私は女に興味はない! 鍛え上げられた男の背中こそが私の正義だ!」
【日本配信画面】
コメント:ちょwww 宰相、開始5分でカミングアウトしたぞwww
コメント:放送事故だろこれ!! ナオちゃん、カメラ止めて!!
コメント:いや、見てくれ。宰相の目がめちゃくちゃ澄んでる……。
■質問3: 苦手なものは?
「ピーマンだ。 あの苦味、青臭さ……。あれを『体にいい』などと嘘をついて子供に食わせる風潮こそ、不誠実の極みではないか。私は絶対に食べん」
【本配信画面】
コメント:わかるわピーマンは敵だよなwww
コメント:5歳児に聞いてるんじゃないんだぞw
■ 質問10:なぜ、そこまで自分をさらけ出すのですか?
スタジオの空気が静まり返る中、レナードは核心を突く質問を投げた。
宰相バルガスの固有スキルは、相手の嘘を確実に見抜く**『看破』**。
「宰相閣下。あなたは『看破』のスキルで、他人の嘘を暴き、本音を強要する立場にあります。……なのに、なぜあなた自身も、そこまでリスクのある私生活をさらけ出すのですか?」
宰相は、それまで浮かべていた恍惚な表情を消し、誠実さの塊のような瞳でレナードを見つめた。
「レナード殿。……私は『看破』の力で、他人の醜い裏側を嫌というほど見てきた。嘘をつき、自分を偽り、甘い言葉で他人を欺く者たちを。……そんな私が、自分自身の本音を隠し、仮面を被って生きるなど、私を信頼してくれている民への裏切りではないか」
宰相は立ち上がり、カメラの向こう側にいる数万の視聴者へ向けて断言した。
「私は他人に『本音』を強要する。だからこそ、私自身が世界で最も『透明』でなければならない! 私が愛する筋肉についても、私の政治信条についても、私は一切の嘘をつかぬ! これが、看破のスキルを持つ私の、唯一の誠実さだ!」
■ レナードの感銘と、特定班の誕生
その言葉に、レナードは深い感銘を受けた。
「配信」もまた、切り取り方一つで嘘をつける力だ。だからこそ、自分も宰相のように、どんなにかっこ悪くても「真実」を届ける責任があるのだと。
……そして、日本の視聴者(特定班)もまた、この時の宰相の「あまりにも強すぎるインパクト」により、**『宰相=筋肉好きの聖人』**という情報を脳裏に深く刻み込んだのである。




