第49話:新時代の幕開け
王都シュトルム。その中心にそびえる王宮の謁見の間は、かつてない静寂に包まれていた。
重厚な扉が開かれ、一人の男が進み出る。レナード・フォン・アスベル。
かつて「無能スキル」を授かったとしてこの場所で嘲笑を浴びた男が、今は数千の黄金の兵を従え、帝国の野望を打ち砕いた英雄として帰還したのだ。
玉座の脇。リディアの父、ローゼス公爵は、壇上のレナードを凝視していた。
かつては鼻で笑ったその背中は、今や誰よりも真っ直ぐに、そして王国の誰よりも巨大な存在感を放っている。
公爵はその姿を、信じられないものを見るような、それでいて深い誇らしさを湛えた眼差しで見つめていた。
「レナード・アスベル卿。貴殿の功績により、北部に平和がもたらされた」
国王が厳かに宣言する。
「本日を以て、卿を正式に『アスベル公爵』に叙する。
また、旧ボナパルト領を含む北部の全域を、卿の領土として賜る」
領主から「統治者」へ。その歴史的瞬間が、不可視のカメラを通じて現代日本へとリアルタイムで中継されていた。
■ 日本の掲示板:【速報】俺たちのレナード、ついに公爵へ【建国開始】
15:名無しの視聴者
叙任式キターーーーー!!
お父さん亡きあと、正式に叙勲されるの待ってたわ。
16:名無しの視聴者
国王の顔、引きつってて草。
「導く光となってくれ(意訳:頼むから反乱とかしないでね)」って声が震えてるぞw
17:名無しの視聴者
そりゃあんな「黄金の加護」見せられたらな。
一国の軍事バランスが、レナード一人でぶっ壊れた瞬間だったし。
18:名無しの視聴者
見てるかローゼス公爵。
あんたが「無能」って切り捨てようとした男が、今やあんたと同等、いやそれ以上の権力者だぞ。
専門官たちの集結と、レナードの言葉
式典の後、王都の別邸にて。
レナードは、ローゼス公爵、そして重鎮たちの前で、オーディションを勝ち抜いた5名の精鋭を紹介した。
「公爵閣下。これからは武力や魔法だけでは領地は回りません。法務のユリウス、財務のマルタ、建築のカイル、広報のシオン、そして私の意図を完璧に汲むナオ。彼らこそが、新生アスベル公爵領の心臓です」
ユリウスは生真面目に一礼し、マルタはすでに王都から持参した膨大な帳簿を弾き始め、建築のカイルは邸宅の構造に修正案を出し始めている。
「……フン。国を創るための『駒』を、配信などという遊びの中で見つけ出したというのか。どこまでも規格外な男だ」
ローゼス公爵が、ようやく認めるように小さく笑った。
そして、傍らには完治したリディアが立っていた。
「レナード様。これからは公爵夫人として、そしてあなたの剣として、この広大な領地を支えてまいります」
レナードはその手を強く握りしめ、ふと、自分を見守る「空」を見上げた。
そこには、あの絶望の淵で自分を救ってくれた、20万人の祈りが渦巻いている。
「……みんな、見ててくれ」
レナードは、視聴者だけに向けて、口角を上げて告げた。
「俺一人じゃ、あの日リディアを救えなかった。今の俺があるのは、画面の向こうにいるお前たちがいたからだ。……ここからが本当の本番だ。俺とお前たちで、世界が腰を抜かすような『理想の国』を作ってやろうぜ」
■ 日本の掲示板:【歓喜】レナードからメッセージきたああああ!
50:名無しの視聴者
「みんな、見ててくれ」だってよ……。
おい、誰だ「たかが配信」なんて言ったやつ。
51:名無しの視聴者
泣いた。ガチで泣いた。
俺たちがログインしたことが、あっちの世界の歴史を変えたんだな。
52:名無しの視聴者
レナード、めっちゃいい顔してやがる。
専門官のメンツも揃ったし、これからは内政無双か。
53:名無しの視聴者
「理想の国」か。いいね、乗った。
軍師諸君、次は北部開拓の資料集めだ。
俺たちの知識で、中世レベルの土地をどこまで近代化できるか試してやろうぜ!
54:名無しの視聴者
アスベル公爵領、建国おめでとう!!!
ギフト「打ち上げ花火(10,000pt)」投下完了!!




