第41話:影踏みの終止符――セラ、不可視の刺突
エリック率いる重装歩兵部隊が、ボナパルト伯爵軍の前衛を力任せに粉砕した。
その猛攻に目を奪われた帝国軍の将兵たちは、空を見上げる余裕すら失っていた。
だが、戦場の真実を映し出す「空のモニター」には、奇妙なノイズのような揺らめきが映り込んでいた。
「セラ、座標は送った。敵の第二陣、後方に控える魔導師団の詠唱を止めろ」
『了解。……もう、喉元まで来ているわ』
レナードの指示に、冷徹な声が通信(念話)を介して返る。
視界の外、影の領域
帝国軍の魔導師たちは、強固な護衛兵に囲まれ、アスベル軍を焼き払うための大規模攻撃魔法を準備していた。
彼らにとって、数キロ先で戦うエリックの部隊は脅威であっても、自分たちの足元に死が忍び寄っているとは露ほども思っていなかった。
「……見つけた」
**セラ(隠密部隊)**は、戦場を舞う「空の映像」すら利用していた。
上空の映像が映し出す「死角」――すなわち、護衛兵たちが互いに背を向け、一瞬だけ視線が交差しない隙間を完璧に見極めたのだ。
彼女が影から影へと跳躍するたび、帝国の魔法兵が一人、また一人と声を上げることなく崩れ落ちる。
首筋に刻まれたのは、髪の毛一本ほどの細い刺し傷。
「な、なんだ!? 敵か? どこにいる!」
護衛兵が慌てて剣を抜くが、セラの姿は既にそこにはない。
彼女は空の映像に映る「自分の位置」を確認し、次の影がどこに伸びるかを計算して移動していた。
15万人が目撃する「処刑」の芸術
上空のモニターは、セラの動きを「熱源感知」の魔法で透過し、王都の広場と日本のリスナーへと映し出した。
「おい、あの女……消えたぞ!?」
「いや、見てくれ! 敵の影の中に溶け込んでいる。……あれがアスベル領の隠密部隊か!」
王都の民衆がその鮮やかな手際に息を呑む中、日本の掲示板は狂喜乱舞していた。
日本配信画面(コメント欄)
コメント:セラさん、ガチの暗殺者すぎて震える。 コメント:空撮映像を「自分のハイド場所の確認」に使うとか発想が現代ゲーマー。
コメント:敵の指揮官、何が起きたか分からずにパニックになってるな。
コメント:【ギフト:¥150,000】セラの毒ナイフ、特注で新調してやって!
崩れる指揮系統
セラはついに、魔導師団の長のもとへ到達した。 「……貴方たちの魔法は、あまりにも遅い」
背後から放たれた短剣が、魔導師長の心臓を正確に貫く。
彼が唱えようとしていた広域破壊魔法は霧散し、制御を失った魔力が爆発。
帝国軍の第二陣は、自らの魔法の暴走によって大混乱に陥った。
「セラよりレナード様へ。……後方の火種は消しました。あとは、あの『千里眼』に任せてもよろしいですか?」
返り血を拭いながら、セラが空を見上げて微笑む。 帝国軍の心臓部は既に麻痺していた。
次は、逃げることさえ許されない「死の雨」が降り注ぐ番だ。




