第37話:深淵のデバッグ――新生領主軍、初陣のダンジョン修行
新体制が整ったアスベル領。
だが、急造の組織に欠けているのは「実戦を通じた連携」だった。
レナードが修行の場として選んだのは、領内北端に位置する未開の地下迷宮『忘却の墓所』。
かつての英雄たちが眠るその場所は、強力なアンデッドやトラップが蠢く危険地帯だ。
「いいか、これはただの魔物退治じゃない。15万人の視線という『極限のプレッシャー』の中で、各部隊が情報をどう処理し、どう動くかを確かめる試運転)だ」
階層1:情報の共有と制圧
迷宮の第一層。暗闇から無数のスケルトンが這い出してくる。
「アル、配置を!」
「了解! 各員のインカムへ敵の位置情報を飛ばします!」
**アル(伝令)**が風の魔法で迷宮内を駆け抜け、瞬時に敵の配置を把握。
その情報は、レナードの「板」を経由して、幹部たちの耳元へ届けられる。
「ミラ(射撃部隊)、10時と2時の方向に潜伏。……撃て!」
レナードの指示に、ミラが暗闇へ魔弾を放つ。
ドローンの赤外線映像と連携した彼女の狙撃は、姿の見えない敵の核を正確に貫いた。
階層2:盾と矛のシナジー
中層へ進むと、巨大なガーゴイルが道を塞ぐ。
「ここは俺の出番だな」
**ブルカン(重装魔法部隊)**が前に出る。
彼は日本リスナーから提案された「ハニカム構造」の魔力壁を展開し、敵の突進を無傷で受け止めた。
「硬いだけじゃないぜ! エリック、隙ありだ!」
「応よ!」 **エリック(団長代行)**が、ブルカンの盾を足場に跳躍。大剣を旋回させ、ガーゴイルの首を一撃で撥ね飛ばした。
階層3:影の排除
迷宮の深部、狡猾なレイス(亡霊)たちが、隊列の「情報の死角」を突こうと忍び寄る。
「……私の前で、影に紛れるつもり?」
**セラ(隠密部隊)**が、自身の影から飛び出し、レイスの核を特殊な聖水が塗られた短剣で切り裂く。
彼女の動きは、配信の俯瞰映像ですら捉えきれないほど鋭い。
日本配信画面(視聴者15万人・熱狂)
コメント:連携が完璧すぎる! 組織票かよ!
コメント:ミラちゃんの精密射撃と配信の相性、チート級だわ。
コメント:エリックとブルカンの信頼関係、もう出来上がってて草。
コメント:レナード、これ修行じゃなくて「蹂躙」になってない?w
「甘いな。……ここまでは想定内だ。リヴィア、仕上げを頼む」
迷宮の最深部、巨大なボス・リッチが姿を現した。強大な死の魔力が場を凍りつかせる。
リヴィアがゆっくりと前へ出る。
彼女は軍の隊列には加わらず、ただその純白の存在感で場を圧倒していた。
「皆様の想い、そしてレナード様の光……今ここに具現します」
レナードがLPを最大開放する。 【システムメッセージ:15万人の『浄化』への願いを変換。リヴィアの聖属性を『極光』へ昇華します】
リヴィアが細剣を掲げると、地下迷宮の天井を突き抜けるような光の柱がリッチを包み込んだ。
「聖なる裁き(ホーリー・デバッグ)――消えなさい」
絶叫と共に、迷宮の主は塵となって霧散した。
修行を終え、地上へ戻る一行。
エリックが汗を拭いながら、不敵に笑う。
「……閣下。情報の共有ってのは、これほどまでに戦いを変えるもんなんですな。これなら、隣国のボナパルト伯がどんな罠を仕掛けてこようと、笑って蹴散らせますぜ」
「ああ。僕たちの軍は、もはやただの兵士の集まりじゃない。……世界を一つのネットワークで繋ぐ、最強の『知の軍団』だ」
アスベル領主軍。
その初陣は、15万人の目撃者と共に、伝説の幕開けとなった。




