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第35話:白日の「公開面接」と、希望のエンターテインメント

武官試験の熱気が冷めやらぬ中、事務官・技術官を対象とした「文部試験」が最終局面を迎えていた。


会場は、難民たちの仮設住居が並ぶ広場。そこに設置された巨大な魔力水晶には、面接の様子がリアルタイムで映し出されている。


 これは単なる試験ではない。


帝国から逃れ、不安の中にいる数千人の難民たちにとって、この配信は最高級の**「エンターテインメント」**でもあった。


「さあ、次の志願者は王都のエリートだそうだ。……みんな、こいつが俺たちの税金を預けるに相応しいか、じっくり見定めようじゃないか!」  広場に設置されたスピーカー(魔導拡声器)からレナードの声が響くと、難民たちは炊き出しの粥を啜りながら、食い入るように水晶を見つめた。


公開処刑か、あるいは喝采か


自信満々に現れたのは、王都の財務省出身の青年ハンスだ。


「私は財務省で三年の実務経験があります。アスベル領のような未開の地の会計を、私の高度な人脈と知識で管理して差し上げましょう」


 ハンスが尊大に語るたび、会場の民衆からは野次が飛び、日本の配信画面には15万人のリスナーによる「行動解析」が流れる。


「ハンスさん。君は『高度な人脈』と言うけれど……日本のリスナー(行動心理学の専門家)たちが、君の視線の動きから『不都合な事実を隠す傾向』を指摘しているよ。……前職の推薦状がこれほど簡素なのは、本当は疎まれていたからじゃないかな?」


「なっ……! 貴様、私を疑うのか!?」


「疑っているんじゃない。15万人の眼と、ここにいる全領民が君を『鑑定』しているんだ。……民衆の前で、自分の非を認められない人間に、公金を預けるわけにはいかない」


 レナードが不合格を告げると、広場からは「そうだ!」「帰れ!」と大きな歓声が上がった。  


難民たちにとって、自分たちを見下してきたエリートが、レナードの「情報の力」で論破される様は、溜まったストレスを吹き飛ばす極上のショーでもあった。


採用:アスベル領を支える「五人の頭脳」


数時間に及ぶ「公開デバッグ面接」を経て、レナードが最後に選んだのは、華やかな経歴よりも「実務と誠実さ」を兼ね備えた五人だった。


1. 【政務官(法務)】ユリウス

合格の決め手: 「法は権力者の道具ではなく、弱者の防壁であるべき」という信念を、広場の難民たちに向けて熱く説き、涙を誘った。


2. 【財務官(会計)】マルタ

合格の決め手: 複雑な領地予算を、即座に暗算で整理。一銅貨の使途にまでこだわる執念が、視聴者から「ガチの会計士」と絶賛された。


3. 【技術官(建築)】カイル

合格の決め手: プレハブ工法の概念を聞き、「地元の安価な石材でも応用可能です」とその場で設計図を書き換えた柔軟性。


4. 【広報官(教育・娯楽)】シオン

合格の決め手: 難しい情報を「子供でもわかる歌」にする即興力を披露。難民の子供たちをその場で笑顔に変えてみせた。


5. 【特務官(調整・秘書)】ナオ

合格の決め手: レナードが口にする「日本の知識(異世界の概念)」を、即座にこの世界の言葉に翻訳して周囲に説明する卓越した理解力。


「……以上の五名を、アスベル領の幹部事務官として採用する!」


 レナードの宣言と同時に、広場は祭りのような歓喜に包まれた。  


自分たちの目の前で、厳しい追及に耐え、誠実さを証明した者たち。難民たちの中に「この人たちなら、自分たちの未来を預けられる」という、確かな信頼と「当事者意識」が芽生えた瞬間だった。


「リヴィア。これで『盾』と『矛』、そして『知恵』が揃った」


「はい。配信が、皆さんの不安を希望に変えていくのを感じますわ」


 15万人の祝福コメントと、数千人の難民たちの拍手。  


新体制の船出を祝うかのように、夕日が領地を黄金色に染め上げた。

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