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第32話:酒場の喧騒、集結する「規格外」たち

アスベル領主館からほど近い、老舗酒場『銀の車輪亭』。  


かつては地元の農夫や職人が静かに杯を交わす場所だったが、今やここは、大陸中の「野心」と「才能」が煮凝ったような熱気に包まれていた。


「おい、冗談だろ……。あそこで静かにエールを煽ってる男、あれ『北の銀狼』エリックじゃないか?」


入口近くの席で、若い志願者が震える声でささやいた。  


指した先には、顔に深い傷を持ち、壁に立てかけた身の丈ほどもある大剣を無造作に扱う男。


かつて王国の北方守備隊で一軍を指揮し、一騎当千と謳われながらも、腐敗した上層部に愛想を尽かして野に下った伝説の武官だ。


「まさか。あんな大物が、辺境の一領地の武官募集に来るもんか」


「いや、見てみろ。あの男の隣で熱心に『板(掲示板)』の写しを読んでる女……あれは『時計塔の異端児』と呼ばれた魔導技師、ミラだぞ!」


日本配信画面(隠し撮り風映像)  

コメント:ちょwww メンツがアベンジャーズ級になってるんだが。  

コメント:あのエリックって人、筋力値バグってない?  

コメント:魔導技師の子、さっきから「レナードの予算決めの仕方」にマジで感動して泣いてるぞw


 酒場の中心では、移民の若者と地元の古参兵が、同じテーブルで熱く議論を交わしていた。


「……信じられるか? 俺は昨日まで帝国で泥を食ってた難民だ。それが今日、あそこに住めるっていう『仮設住居』の図面を見せてもらった。レナード様は『お前たちの腕があれば、ここは数年で石造りの街になる』って、俺の目を見て言ったんだ」


「ああ、あの領主様は口だけじゃない。俺たちの干物を、たった一晩で王都の宝石に変えちまったんだ。……なあ、あんたも職人なら、明日の試験、全力でやれよ。あの方の『板』には、嘘は通用しねえからな」


 酒場の主人が、忙しそうにジョッキを運びながら笑う。


「へっ、とんでもねえことになったもんだ。王都の最高学府を首席で出たってやつが、給仕の仕事でもいいから使ってくれって泣きついてくるんだからな。……この街は今、世界で一番『未来』に近い場所なんだよ」


日本配信画面  

コメント:酒場の親父さん、いいこと言う。  

コメント:ただの求人じゃなくて、みんな「何か」を期待して集まってるのが伝わるな。  

コメント:レナード、これ採用ミスったら暴動起きるレベルの熱量だぞw


 その時、酒場の扉が勢いよく開いた。  


入ってきたのは、衛兵長のであるミゲルだ。


「志願者の皆様、お騒がせいたします! 明朝の武術試験会場が、予定の広場から『演習場全体』に変更となりました。レナード様より伝言です――『才能を隠す必要はない。君たちのすべてを、12万人の観客に見せつけてほしい』とのことです!」


「なお文部試験は翌日になりますので、改めて連絡します」


 酒場が爆発的な歓声に包まれる。  

エリックは静かに立ち上がり、大剣を背負った。技師のミラは、瞳を輝かせて魔導筆を握りしめる。


 かつて見放された辺境の地は、いまや最強の配信スキルが灯した「希望」という火に寄せられるように、世界中の英雄たちが集う「嵐の目」と化していた。

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