第31話:人材の「大公募」と、泥の中の希望
数千人の移民受け入れは、アスベル領に未曾有の混乱と、それ以上の「可能性」をもたらしていた。
主館の執務室で、レナードは膨大な書類を前に、隣に立つ内政担当の大臣へ視線を向けた。
「大臣、これからしばらくの間、この領地はひどく騒がしくなります。
……ですが、止めるつもりはありません」
「……レナード殿、まさか、また何か突拍子もないことを?」
「ええ。領地のインフラを整え、移民を『守るべき負担』から『共に歩む力』に変えるには、圧倒的に人が足りない。……だから、募集します。出身も、身分も、過去の経歴も問わない。必要なのは『実力』と『やる気』だけだ」
日本配信画面(タイトル:【激変】異世界でハローワーク開設してみた。高給・ホワイト・実力主義!) コメント:レナード、ついに大規模求人か!
コメント:事務官に武官、職人まで……これ、国一つ作る勢いだな。
コメント:『出自を問わず』ってのが、この世界じゃ一番の衝撃だろw
異世界同時放送:アスベル領「大公募」宣言
レナードは「板」をジャックし、王国中の魔力水晶へ自らの姿を映し出した。
「王国全土の皆さんに告ぐ! アスベル領は今、新しい時代の礎を築くための『手』を求めている!
計算が得意な者、剣を振るえる者、家を建てられる者、そして何より、今の境遇を自分の力で変えたいと願う者! 出自は問わない。平民、浪人、帝国の移民、すべてを受け入れる。
報酬は現行の王都基準の一.五倍。ただし、採用は僕と、僕の後ろにいる『12万人の試験官』による厳正な試験で決定する!」
王国各地(どよめく民衆)
「一.五倍だと!?」
「身分が関係ないなんて、お伽話か?」
「アスベル領に行けば、人生をやり直せるのか……!」
放送と同時に、領内の広場では難民たちのための「仮設住居」の建設が急ピッチで進められていた。
「リヴィア、建設現場の状況は?」
「はい。日本の皆様から頂いた『プレハブ工法』の知恵を応用し、木材を規格化して組み立てております。これなら、今日中にはさらに百家族分の寝床が確保できますわ」
泥にまみれ、自らも材木を運ぶレナードの姿が、配信を通じて世界中に流れる。
日本配信画面
コメント:このスピード感よ。
コメント:移民の人たちも、自分たちの家を作る手伝いをしてるな。
コメント:レナードが言った「仕事を与える」ってのが、一番の救いになってる。
コメント:【ギフト:¥100,000(新人教育用の筆記用具代)】
しかし、この「大公募」は、王国の保守的な貴族たちにとっては、自分たちの権威を根底から揺るがす宣戦布告に等しかった。
「身分を問わず高給で雇うなど、平民に牙を剥けと教えるようなものだ。アスベルの小僧、調子に乗りすぎたな……」
国境付近には、志願者に混じって、近隣領主の放った刺客や、帝国の工作員が不穏な動きを見せ始める。
「……いいよ。まとめて来ればいい」
レナードは、建設途中の住居の屋根に立ち、夕日に染まる国境を見据えた。
「全部『試験』のネタにしてやる。……この領地に入る資格があるかどうか、12万人の眼で徹底的に精査させてもらうからな」
新しき領主の「人集め」という名の嵐が、王国全体を飲み込もうとしていた。




