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第25話:情報の誠実さと、琥珀色の誇り

 「琥珀干し」の爆発的ヒットから数日。王都の市場には、異様な光景が広がっていた。


「さあさあ! アスベル領の干物より安いよ! 味は同じ、値段は半分! 大手『ヴォルガ商会』が自信を持ってお届けする、特製干物だ!」


 王都の大商、ヴォルガ商会が、レナードのやり方を模倣して安売り攻勢を仕掛けてきたのだ。


見た目は「琥珀干し」にそっくりだが、大量生産による低価格を売りにしている。


日本配信画面(怒りのコメント欄)  

コメント:出たよ、パクリ商品。  

コメント:レナード、こいつら潰そうぜ。情報の力で悪評流せば一撃だろ。  

コメント:前のアドバイス通り、偽物だってネガキャンしようぜ!


かつてのレナードなら、即座に「板」を使い、ヴォルガ商会の裏事情を暴き、民衆の心理を操って完膚なきまでに叩き潰していただろう。  


だが、今のレナードは違った。彼は無言で、隠れ根島の倉庫を調査していた。


「……レナード様、ヴォルガ商会の不当な競争について、抗議の放送をなさらないのですか?」  

リヴィアの問いに、レナードは静かに首を振った。


「相手を叩く前に、まずは自分たちの足元を見なきゃいけない。……父上なら、そうしたはずだ」


 レナードは「板」を使い、次に出荷予定の干物の魔力波形を詳細にスキャンした。  


すると、ある事実が判明する。前回の出荷分は完璧だったが、注文が殺到したせいで、今回のロットは熟成期間が数時間足りず、内部の水分活性値が理想を上回っていたのだ。


「……これじゃダメだ。味は落ちるし、保存期間も短くなる」


配信開始:緊急謝罪と予約停止

 レナードは、王都と日本に向けて同時配信を開始した。


「皆さん、お伝えしなければならないことがあります。……現在予約を受け付けている『琥珀干し』の次期出荷分ですが、すべて予約をキャンセルし、販売を停止します」


王都・配信画面  

コメント:ええっ!? 楽しみにしてたのに!  

コメント:ヴォルガ商会の安い方に行っちゃうぞ? いいのか?


「理由は、僕の管理不足です。需要に追いつこうとして、職人のギルさんに無理をさせました。その結果、本来お届けすべき品質に達していません。……隣で安く売られているものがある中、僕たちが『高いけれど本物だ』と胸を張れないものを売るわけにはいかないんです」


 レナードは深く頭を下げた。  


これまで「無敵」に見えていたレナードの、初めての公の場での「負け」と「謝罪」だった。


日本配信画面  

コメント:……マジか。  

コメント:逃げずに品質で謝罪した。レナード、変わったな。  

コメント:相手を潰すより、自分の信頼を守る方を選んだか。


「ヴォルガ商会さんの商品がどうかは、僕が言うことではありません。

皆さんの舌で判断してください。……ただ、僕たちは、納得のいくものしか売りません。それが、この島と、亡き父への誓いです」


 放送後、一時的に注文はヴォルガ商会へ流れた。


しかし、数日後には異変が起きた。  


安さにつられて買った人々から、「生臭い」「お腹を壊した」という苦情が殺到したのだ。


ヴォルガ商会は、見た目だけを似せるために無理な急速乾燥を行い、中身が腐敗していた。


 一方で、誠実に対応したレナードの元には、以前にも増して「待っているから、本物を作ってくれ」という熱烈な応援メッセージが届くようになった。


「……レナード。結果的に、ヴォルガ商会は自滅しましたね」  


リヴィアの言葉に、レナードは小さく笑った。


「誰かを打ち負かすことだけが勝利じゃない。……信頼という名の情報を積み上げること。


それが、一番強い武器なんだって、ようやく分かったよ」


その夜、日本の掲示板には、レナードを「神」と呼ぶ声ではなく、「一人の立派な領主」として敬う言葉が溢れていた。


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