第23話:絶品! 隠れ根の「幻の干物」を求めて
父の死から一ヶ月。悲しみを完全に癒やすことはできずとも、レナードの瞳には確かな熱が戻っていた。
今日は、新しい国造りの第一歩として、領内に眠る「埋もれた資源」の再発掘を行う。
「みんな、お待たせ。今日は久しぶりに、まったりとしたロケ配信をお届けするよ」
日本配信画面(日本限定・調査ロケ)
コメント:レナード、おかえり!
コメント:顔つきが少し大人になったな。応援してるぞ。
コメント:今日はグルメ回? 干物って異世界にもあるんだ。
レナードとリヴィアは、領地の北端にある小さな港から、一艘の小舟に揺られていた。
目指すは、潮の流れが速く、船でしか辿り着けない孤島「隠れ根島」。
そこには、かつて王宮の料理人すら唸らせたという「伝説の干物」を作る職人が住んでいるという。
「……レナード様、潮風が心地よいですわ。でも、本当にこんな不便な場所の干物が、そんなに凄いのですか?」
不思議そうに尋ねるリヴィアに、レナードは頷く。
「情報の基本は『一次ソース』に当たる。誰も知らない価値を見つけ出して、正しく伝える。それが僕の新しい仕事だよ。……ほら、見えてきた」
島に上陸すると、そこには数百匹もの魚が、独特の木の枠に吊るされていた。
現れたのは、肌が真っ黒に焼けた無愛想な老人・ギル。彼はレナードの「アポ」に対しても、鼻を鳴らすだけだった。
「坊主、悪いが今は忙しい。教会の混乱だか何だか知らねえが、こちとら魚の機嫌を伺うので精一杯なんだ」
レナードは焦らず、カメラをゆっくりと干物に近づけた。
驚いたのは日本のリスナーたちだ。
日本配信画面
コメント:待て待て、あの干物、表面が琥珀色に輝いてないか?
コメント:脂のノリが半端ない。しかもあの切り方、熟練の技だぞ。
コメント:【ギフト:¥3,000】飯テロの予感がする……!
「ギルさん、この魚、ただ干してるだけじゃないですよね。潮風の当たる角度と、島特有の薬草で燻して……熟成させている」
レナードの指摘に、老人の目がわずかに見開かれた。
「……ほう。見てくれだけの坊っちゃんかと思ったが、少しは『視える』ようだな」
ギルはぶっきらぼうに、炭火で炙った一切れの干物をレナードとリヴィアに差し出した。
一口食べた瞬間、二人の動きが止まった。
「……っ、何これ。濃厚な旨味が、口の中で爆発する……! 噛めば噛むほど、海の豊かさとスモーキーな香りが広がって……」
「あぁ……。わたくし、今まで食べてきたお肉よりも、こちらの方が満足感がありますわ」
日本配信画面
コメント:リヴィアちゃんのリアクションでガチなのがわかるw
コメント:レナード、食レポが上手くなりすぎてて辛い。
コメント:これ、日本で売ってくれよ! 酒のつまみに最高だろ!
「ギルさん。この干物、今はどうやって売ってるんですか?」
「……どうもこうも、たまに来る商人に叩き売るだけさ。船で運ぶには鮮度が落ちるし、誰もこの島の価値なんて分かっちゃいねえ」
レナードは、かつての傲慢な笑みではなく、静かな、だが力強い笑みを浮かべた。
「なら、僕に任せてください。この島を『聖地』にします。……道がないなら、僕が『情報の道』を引いてみせる」
レナードは決めた。この素晴らしい職人技を、物流と情報で繋ぎ、領地の新たな特産品としてブランド化することを。
それは、父が守りたかった「民の暮らし」を豊かにするための、彼なりの戦いだった。




