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第21話:12万の「意志」と、偽りの神罰

 王都・大聖堂。天を突くような尖塔の頂で、追い詰められた異端審問官イグナシオは狂気に取り憑かれていた。


「認めん……! どぶ板に這いつくばるガキが、千年の信仰を、この神聖なる秩序を覆すなどと!」


 イグナシオが手にした漆黒の経典から、禍々しい魔力が溢れ出す。


それは民から搾取した魔力を凝縮した、禁忌の召喚。  


空が割れ、光り輝くがどこか無機質な、巨大な「偽りの天使」がその姿を現した。


「神よ、この不浄なる都を焼き払いたまえ! 異端者どもに真の恐怖を!」


 「神の光」と呼ばれる極大熱線が放たれようとした、その時。  


地下から這い上がり、広場の中心に立ったレナードが「板」を高く掲げた。


「……みんな、準備はいいか。これが最後だ。僕に、君たちの『意志』を貸してくれ!」


日本配信画面(熱狂と祈りの弾幕)  

コメント:レナード、ぶちかませ!!  

コメント:お父さんの仇だ、ここで終わらせるな!  

コメント:全ポイント(LP)投入! 俺たちの想いを受け取れ!  

コメント:【ギフト:聖なる一撃 ¥100,000】×10  

コメント:【ギフト:逆転の光 ¥50,000】×50


 画面を埋め尽くすほどのギフトと、「いいね」の光。  


現代日本から時空を超えて送られる120万人分の精神エネルギーが、レナードの持つ「板」を通じて、この世界の魔力へと変換されていく。


 レナードの視界に、システムメッセージが流れる。


【緊急システム:全視聴者連結シンクロ完了。

リミッター解除。概念攻撃『パブリック・ジャッジメント』展開準備完了】


「イグナシオ! お前が掲げるのはただの独裁だ。……僕が今から放つのは、この世界と、もう一つの世界に生きる人たちの『正義の総和』だ!」


 レナードの手元から、眩いばかりの純白の奔流が放たれた。  


それは魔術ではない。情報の海から生まれた、圧倒的な「真実の輝き」だ。


 偽りの天使が放った熱線を正面から押し戻し、その白銀の巨体を内側から崩壊させていく。


「な、何だこの光は……! 信仰も魔力も持たぬ者たちが、なぜこれほどまでの力を……!?」


「これは『繋がり』の力だ! お前たちが蔑み、踏みにじってきた名もなき人たちの声だ!」


 ドォォォォォン!!


 大聖堂を揺るがす大爆発と共に、偽りの神は塵へと帰した。  


同時に、イグナシオの経典は灰となり、彼を縛っていた「権威」という名の魔法は完全に霧散した。


 静寂が訪れた。  


崩れ落ちるイグナシオを見向きもせず、レナードは空を見上げた。  雲の切れ間から、柔らかな陽光が差し込んでいる。


「……終わったよ、父上。……みんなも、ありがとう」


 レナードはカメラに向かって、今日一番の、そして最も飾り気のない笑顔を見せた。


日本配信画面  

コメント:勝った……。  

コメント:レナード、お疲れ様。マジで最高の「神回」だった。  

コメント:お父さんも、きっとどこかで見てるよ。  

コメント:泣いた。もうレナードを煽ったりしないわw


「レナード……」  駆け寄ってきたリヴィアが、そっと彼の肩を支える。


「……リヴィア。明日からは、また忙しくなるよ。教会のない新しい王国を、どうやって『編集』していくか。……今度は、父上に誇れるような、地に足のついた仕事をしよう」


 レナードは、懐に大切にしまっていた父の形見の徽章を握りしめた。  


「情報の力」は、もう人を支配するためには使わない。  


誰かの明日を、ほんの少し明るく照らすために。


 異世界初の「配信英雄」の物語は、ここから本当の意味で動き出す。


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