第20話:深淵からの告発、闇を照らす100万の眼
王都の華やかな目抜き通りの真下。かつて「情報の聖域」と自惚れていた少年は、ネズミの這い回る地下水道の片隅にいた。
泥と返り血で汚れた礼服。だが、その手にある「板」だけは、かつてないほど鋭い光を放っている。
「……みんな。聞こえるかい」
レナードの声は、低く、静かだった。
かつてのような、人を煙に巻くための「魔法の話術」ではない。魂を削り出したような、重い言葉だ。
日本配信画面(待機者数:12万人突破)
コメント:レナード……生きててよかった……。
コメント:お父さんのこと、本当にごめん。俺らもバカだった。
コメント:何すればいい? 指示をくれ。
コメント:【ギフト:¥50,000】これで最強の機材(魔法)を揃えてくれ!
「謝る必要はないよ。僕をここまで傲慢にさせたのは、僕自身の弱さだ。……でも、一つだけ約束してほしい。これから僕がやることを、世界中の誰よりも厳しく見届けてくれ」
レナードは、ポイントをすべて注ぎ込み、ある「隠し機能」を解禁した。
それは、【広域魔力共鳴・強制ジャック】。 王
都全域、そして王国各地の魔力水晶へ、教会の干渉を無効化して映像を送り込む「禁断の術」だ。
隣には事件を聞きつけて駆けつけてくれたリヴィアもいる。
「リヴィア、準備はいいかい」
「はい……あなたの父様の仇打ち。わたくしも、誇りにかけて」
二人は、父・ローゼスが命を懸けて守り抜いた「証拠」を手にしていた。
それは、聖教会の地下深くで秘密裏に行われていた、禁じられた「魔力抽出実験」の記録。
教会の幹部たちが、民の信仰心を利用してその魂を搾取し、不老不死の秘薬を作っていたという、おぞましい真実だ。
「……さあ、開幕だ。地獄の生放送を始めよう」
王都:大聖堂広場
父の処刑(という名目の暗殺)から一夜明け、勝利を祝う鐘が鳴り響こうとしたその瞬間。
広場に設置された巨大な魔力水晶が、突如として真っ赤に染まった。
「な、なんだ!? 放送事故か?」
「いや、見ろ! あれは……レナード様だ!」
水晶に映し出されたのは、地下の暗闇に立つレナードの姿。
そして、彼の背後にあるのは、無数のカプセルに閉じ込められ、魔力を吸い取られる民衆の姿だった。
「王国各地の皆様。……これが、皆さんが『神聖』だと信じていた教会の、真実の姿です」
レナードは淡々と、だが残酷なまでに詳細に、教会の腐敗を「解説」し始めた。
日本のリスナーたちが即座に解析し、分かりやすく図解化したデータが、次々とテロップとして画面に踊る。
『犠牲者数:過去十年で3,000名』
『搾取された魔力の総量:王都の全予算の五倍』
『黒幕:異端審問官イグナシオ、および枢機卿ベネディクト』
「ふざけるな! 消せ! あの板を破壊しろ!!」
聖都のベランダで、イグナシオが顔を真っ赤にして叫ぶ。 だが、もはや遅かった。
日本配信画面
コメント:テロップ入れ完璧。
コメント:これ、異世界版の「パナマ文書」じゃねえか。
コメント:逃がすな! 証拠映像をもっとズームしろ!
「イグナシオ審問官。……あなたは『情報の力』を幻惑だと言いましたね。でも、本当の幻惑は、あなたたちが何百年も続けてきたこの『嘘』の方だ」
レナードはカメラを凝視し、言い放った。
「父は言いました。人の上に立つ者には『責任』があると。……僕は、僕が広めた情報の責任を、ここで取ります。……王国中の皆さん、立ち上がってください。裁くのは僕じゃない。真実を知った、あなたたち自身です」
その瞬間、王都全域で、怒号のような歓声が上がった。
信仰という名の「情報の枷」が、今、完全に砕け散ったのだ。




