第17話:路地裏の革命、光のランウェイ
潰れかけた裁縫店の奥で、リヴィアが着替えて戻ってきた。
それは、既存の「膨らんだ袖に何重ものスカート」という貴族の常識を覆す、スレンダーで機能的なシルエット。
肩のラインが美しく強調され、ウエストから膝下へと流れるようなラインは、まるで現代のクラシック・モダンなワンピースのようだった。
「……レナード様、やはり少し恥ずかしいですわ。こんなに体の形が分かる服なんて……」
「いいや、最高に似合っているよ。リヴィア、自信を持って。今から君が、この国の『美』を定義するんだ」
レナードは、「日本」と「王都」の両方に同時配信を開始した。
日本配信画面(待機勢歓喜)
コメント:リヴィアたんのモデル回キター!!
コメント:うわ、何このデザイン。シンプルなのにめちゃくちゃ気品ある。
コメント:異世界のファッション誌が今、創刊されたな。
王都・領内配信画面(魔力水晶)
コメント:な、なんだあの服は!? 肌の露出は少ないのに、なぜあんなに目を引くんだ?
コメント:あんなに軽やかな姿……私たちの重苦しいドレスとはまるで違う。
「王都の皆様、こんにちは。……今日はね、少しだけ『自由』のお話をさせてください」
レナードは、あの温かみのある、だが確信に満ちたリズムで語り始めた。
「皆さんは、誰かの決めた『伝統』という名の鎧に、心まで閉じ込めてはいませんか? 美しさとは、隠すことでも飾ることでもありません。……本当の美しさは、こうして『自分らしく歩ける』ことにあるんです」
レナードが合図を送ると、リヴィアは店内の狭い通路を、まるでパリのランウェイのように優雅に歩き出した。
レナードはポイントを消費し、**特殊な照明効果**をリヴィアに集中させる。
逆光が彼女のシルエットを浮き彫りにし、布地の質感を何倍にも高級に見せた。
日本配信画面
コメント:レナード、演出スキル上げすぎだろw
コメント:逆光の使い方が完全にプロのカメラマン。
コメント:【ギフト:¥10,000】リヴィアちゃんのドレス、現実でも売ってくれ!
「見てください。この曲線、この動き。……これを作ったのは、路地裏で一人、自分を信じ続けた職人さんです。教会はこれを『不謹慎』と呼ぶかもしれません。でも、この輝きを見て、誰が彼を否定できるでしょうか?」
レナードはカメラを店主の震える手にズームさせた。
「この服を、限定100着、アスベル領の新作として予約を受け付けます。……自分を、変えてみたいと思いませんか?」
その瞬間、王都の魔力水晶前で見ていた令嬢たち、そして商家の下女たちまでもが、一斉に動き出した。
「あの服が欲しい!」「私も、あんな風に歩いてみたい!」という衝動が、教会の「慎ましさ」という呪縛を一気に突き破ったのだ。
王都・配信画面(パニック状態)
コメント:予約はどこ!? アスベル領まで行けばいいの!?
コメント:伝統なんてどうでもいい、あんなに綺麗な姿を初めて見た!
予約注文の通知が、板を埋め尽くすほどの速度で流れ始める。
店主は、カウンターに積み上がる注文書の山を見て、腰を抜かして座り込んだ。
「売れた……。俺のセンスが、認められた……」
「おめでとうございます。さあ、忙しくなりますよ」
レナードは満足げに微笑んだ。
だが、その放送を見ていた教会の審問官・イグナシオは、背後の暗闇で怒りに指を震わせていた。
「……民衆の欲望を煽り、慎ましき伝統を破壊する。
レナード・フォン・アスベル。やはりお前は、この世に災いをもたらす蛇だ」
一方で、アスベル領の主館でこの放送を見ていた父・ローゼスは、深く、深く溜息をついた。
「……民の心を掴むのが、これほどまでに容易いとは。……危うい。あまりに危うすぎるぞ、レナード」
勝利に酔いしれるレナードは、まだ気づいていない。
自分が今、最も強力で、最も「話術」が通じない組織の逆鱗に触れたことに。




