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第15話:届かぬ親心と、若き英雄の驕り

アスベル領の主館、執務室。  


レナードは豪華な椅子に深く腰掛け、目の前に浮かぶ「視聴者数」と「莫大な納税額」の数字を眺めていた。


「どうだい、父上。この一ヶ月の収益だけで、以前の領地の三年分だ。物流は空を駆け、国民は僕のニュースを神託のように待ち望んでいる。もう、アスベル領を『貧乏領地』なんて呼ぶ奴は一人もいない」

 

対面に座る父、ローゼス公爵は、息子が差し出した輝かしい報告書に目を落とすこともなく、ただ静かに言った。


「……レナード。お前は今、崖の淵を全力で走っていることに気づいていないのか」


「崖? 冗談はやめてくれ。僕は王国を、この領地を救ったんだ。ザッカー大臣すら僕の掌の上だ。これのどこが崖なんだよ」


 レナードの声には、隠しきれない傲慢さが混じっていた。


 成功。賞賛。そして何十万人という日本のリスナーからの「神」「天才」という全肯定。


それが、10代の少年の精神を肥大化させていた。


「お前が扱っているのは、力ではなく『劇薬』だ。情報の魔力で民を酔わせ、権力者と危うい均衡を保っているに過ぎない。……今のお前には、守るべき『個』としての強さが足りていない。そのスキルが消えた時、お前には何が残る?」


「またそれか……! 父上はいつもそうだ! 僕がどれだけ成果を出しても、一度だって認めてくれたことがない! あなたが守れなかったこの領地を、僕は変えたんだ。古い考えに固執して、立ち止まっているのは父上のほうじゃないか!」


ガタン、と椅子を蹴るようにしてレナードが立ち上がる。  


ローゼスは何かを言いかけ、苦しげに口を閉ざした。


厳格な彼には、息子への深い愛情を言葉にする術がなかった。


ただ、情報の波に飲み込まれ、いつか足元を掬われるであろう息子の未来を案じ、あえて厳しい言葉をぶつけることしかできなかった。


そこにはただ不器用な一人の父親の姿があった


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