第14話:異世界初の報道番組『アスベル・ワイドニュース』
ザッカー大臣との密約から一週間。王国全土の魔力水晶には、これまでの「ただの静止画」や「緊急通達」ではない、全く新しい映像が映し出されていた。
「王国各地の皆様、こんにちは。……そして、本日も良い一日をお過ごしでしょうか。これより、最新の王国情勢をお届けする『アスベル・ワイドニュース』の時間です」
画面に映るのは、清潔感のある礼服を纏ったレナード。
その背後には、最新の街道整備の様子や、王都の賑わいが鮮明な「映像」として流れている。
王都・領内配信画面(魔力水晶)
コメント:おお、始まったぞ! 毎週この時間はこれを見ないと落ち着かない。
コメント:レナード様のあの落ち着いた声、安心するなぁ。
日本配信画面(裏側実況中)
コメント:ついにニュース番組まで作りやがったw
コメント:ワイプ演出とかテロップの出し方が完全に日本のテレビのそれ。
コメント:ザッカー大臣、ちゃっかり「コメンテーター」席に座ってて草。
「まず最初のニュースです。王都通商大臣・ザッカー閣下の辣腕により、多額の不正蓄財を行っていた地方貴族数名が、厳格に処罰されました。没収された財産は、直ちに国民の皆様のための『街道整備基金』へと充てられます」
画面には、兵士に連行される汚職貴族の姿(レナードの隠し撮り映像)と、それを見守る民衆の歓声が映し出される。
これまでは「噂」でしかなかった正義の執行が、「視覚的真実」として国民に共有されたのだ。
「閣下、今回の迅速な対応について、一言いただけますか?」
レナードが振ると、画面端のザッカー大臣がこれ以上ないほど善良な顔で頷く。
「うむ。民の血税を啜る輩は、我が王国の法が許さぬ。すべては陛下の慈悲と、公明正大な商いのためにあるのだよ」
日本配信画面
コメント:大臣、演技派すぎるwww
コメント:でもこれ、国民からしたら「国がちゃんと仕事してる」って見えるよな。
コメント:情報のコントロール術が現代レベル。
「続いてのニュースです。アスベル領から王都へ続く主要街道の舗装工事が、予定を大幅に上回るスピードで進行しています。……ご覧ください。この滑らかな石畳。これにより、商隊の移動時間はこれまでの三割削減、荷崩れによる損害もほぼゼロになります」
空撮映像が、美しく伸びる一本の道を映し出す。
かつては泥濘と盗賊に怯えた道が、文明の象徴へと生まれ変わっていた。
「国の税金が、目に見える形で自分たちの生活を豊かにしている」
その実感が、国民の間に「王国への信頼」という、金では買えない価値を育んでいた。
「……レナード殿。お前の言う通りだ」
放送終了後、ザッカー大臣が満足げに喉を鳴らした。
「締め付けるよりも、こうして『正義の味方』を演じている方が、はるかに金も権力も集まってくる。……国民どもの、あの輝くような羨望の眼差し。病みつきになりそうだ」
「ええ。情報の光を当てる場所を、僕たちが選ぶ。それだけで、この国はもっと良くなりますよ」
レナードは、日本側のコメント欄に流れる「プロパガンダの使い方が天才的」
「異世界版の池上〇かな?」という冗談混じりの称賛を横目に、次の番組構成を練り始めた。
しかし、その絶大な「影響力」を、苦々しく見つめる影があった。
王国の伝統を司る、聖教会の高官たちである。
「……人の心を板きれで操るとは、魔性の業。アスベルの子よ、お前のその『偽りの光』、我が主の裁きに耐えられるかな?」




