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第12話:情報が繋ぐ、アスベル領の「黄金時代」

バラムの剣が爆売れしてから数週間。


アスベル領は、もはや「辺境の貧乏領地」の面影を完全に失っていた。


 レナードが主館のバルコニーから見下ろす街の景色は、かつての灰色ではなく、活気という名の極彩色に染まっている。


「レナード様、今月の収支報告です。……正直、数字を見るのが怖いくらいですわ」  


リヴィアが差し出した書類には、これまでの領地の年間予算をたった一ヶ月で上回る税収が記録されていた。


日本配信画面(街歩き実況中)  

コメント:おいおい、街並みが急激に発展してないか?  

コメント:道の舗装が始まってる! 重機はないけどドワーフたちが魔道具でやってるのか。  

コメント:あの活気、まるで高度経済成長期の日本を見てるみたいだ。


レナードはカメラを動かし、領内のあちこちで起きている「変化」をリスナーに共有した。


まず、物流のハブ化。  


バラムの工房へ材料を運ぶ商隊、そして剣を買い付けに来る冒険者たちが殺到したことで、領内の宿場町は連日満員。


食堂では、レナードがかつて紹介した「石鹸」で清潔になった給仕たちが、次々と地元の特産料理を運んでいる。


「みんな、見て。これが『経済の循環』だ」  


レナードは静かに語りかける。


「僕がやったのは、バラムさんの剣を売っただけじゃない。バラムさんが潤えば、彼が材料を買う商人が潤う。商人が泊まる宿屋が潤う。宿屋が仕入れる農家の野菜が適正価格で売れるようになる。……情報という潤滑油を注げば、歯車は勝手に回り出すんだ」


日本配信画面  

コメント:レナード、完全に「領地経営シミュレーション」のクリア後画面じゃん。  

コメント:農家の親父さんが笑ってるの見ると、マジでこの配信応援して良かったって思うわ。  

コメント:【ギフト:¥10,000】アスベル領のインフラ整備費用に使ってくれ!


 さらに、レナードはポイントを使い、領内の中心地に**「情報掲示板(魔力サイネージ)」**を設置した。  


そこには、王都の相場、迷宮の安全ルート、そして「今日のおすすめ商品」がリアルタイムで更新される。


「今までは、誰かが情報を独占して利益を得ていた。でも、ここでは全員が同じ情報を手にできる。……そうすることで、商売のフェアな競争が生まれるんだ」


 広場では、カレンが新しい事務服に身を包み、若い領民たちに「帳簿の付け方」を教えていた。


彼女もまた、ただの職人の娘から、領地の経済を支えるリーダーへと成長していた。


「レナード様、おかげさまで父は……寝る間も惜しんで槌を振るっています。あんなに楽しそうな父、初めて見ました」  


カレンがレナードを見つけ、深々とお辞儀をする。


 しかし、平和な時間は長くは続かない。  


レナードの視界にある「広域監視カメラ」が、領地の入り口で足止めされている巨大な商隊を捉えた。


「……リヴィア、楽しい散歩はここまでだ。王都のザッカー大臣が、ついに実力行使に出たらしい」


 商隊を率いているのは、王都の近衛兵。  


彼らが持っているのは、王の印章が押された**「物流制限令」**の通達書だった。


「アスベル領への鉄鋼、および食料の流入を一時停止する……だと?」  


リヴィアが顔を曇らせる。


「経済が回りすぎたせいで、彼らには僕たちが『脅威』に見えたんだろうね。……でも、道が塞がれたくらいで止まる僕らじゃない」


レナードはニヤリと笑い、視聴者コメントを見るのだった。

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