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第7話:王都の洗礼と「最新グラフィック」の死角

ボルドー伯爵による反乱は、アスベル領の完勝で幕を閉じた。  


捕らえられた伯爵は王都へ護送され、レナードとリヴィアは「王国を救った英雄」として、国王直々の招待を受けることとなった。


 王都・シュトルム。  


華やかな大通りを、公爵家の馬車が進む。


王宮の謁見の間。


そこには、王立魔導師団の団長であり、この国の「伝統」を象徴する老人・バルカが待ち構えていた。


「……それが、巷で噂の『覗き見スキル』か」


 バルカが杖を振ると、彼の周囲に幾重もの幾何学模様が浮かび上がり、半透明のドーム状の壁が展開された。 「私の『絶対防御』は、いかなる干渉も受け付けぬ。


少年よ、その板で……私の死角が見つけられるかな?」


レナードは静かにウィンドウを開いた。王都への配信は切り、現代日本にのみ、この光景を中継する。


日本配信画面(裏側実況中)  

コメント:出たw 頑固そうなじいさんキャラww  

コメント:てか、あのバリアのCG凄すぎない? 空間が歪んで見えるんだが。  

コメント:最新のホログラム技術か何かか? 物理演算どうなってんだよ。


 日本のリスナーにとって、目の前の魔法は「最高峰の映像技術」に過ぎない。  


だが、レナードは知っている。これが実在する強力な魔力障壁であることを。


「みんな、この『バリアの演出』、どう思う? どこか不自然なところはないかな?」


日本配信画面  

コメント:演出にしては、地面のタイルの反射が不自然に途切れてる場所があるな。  

コメント:右上のテクスチャが0.1秒おきに微振動してる。同期ズレっぽい。  

コメント:じいさんが杖を右手に持ち替える瞬間、光の屈折率が変わるぞ。そこだけ処理が追いついてない(設定ミス)か?


「……なるほど。みんな、鋭いな」


 レナードには、リスナーの指摘が「魔力の淀み」として理解できた。  


最新技術を疑う現代人の目は、魔法という超常現象の「構造的な欠陥」を、映像のバグを見つけるように暴き出したのだ。


「リヴィア。団長が杖を持ち直す瞬間、足元の三枚目のタイルの右端を突いてみて」


「……任せてください」


 リヴィアがゆっくりと歩き出す。バルカは鼻で笑った。


「無駄だ。私の防御は完璧……」


 カチッ。  バルカが杖を握り直した、その一瞬。  


リヴィアの剣の鞘が、レナードに指示された「座標」を正確に突いた。


 パリン、と硝子が割れるような音が響き、王国最強の防御壁が霧散した

「な……な、なんだと……!? 私の術が、無力化された……!?」


「団長。完璧な演出なんて、この世にありません。……視点カメラを変えれば、どんな壁にも隙間はあるんです」


日本配信画面  

コメント:うおおおお!! 当たり判定見切ったwww  

コメント:じいさんの顔www 100点満点の驚き方www  

コメント:これ、攻略Wiki班が有能すぎるだろ。  

コメント:【ギフト:¥5,000】スカッとした! 運営レナードのデバッグ作業お疲れ!


呆然とするバルカ。そして、その様子を玉座から見ていた国王が、低く笑い声を上げた。


「面白い。……レナード・フォン・アスベル。お前のその『目』、我が王国の未来のために、正式に借りるとしよう」


 王都の権力者たちの前で、レナードは自らの力を証明した。  


しかし、その勝利を見つめるローゼス公爵の表情は、どこか険しかった。


(……情報の力。これが、これからの戦い方だというのか)

 魔法の神秘すら「デバッグ」される時代の幕開けだった。


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