死なせてください
掲載日:2025/11/15
校舎の屋上に立ち、眼前に広がる光景にゴクリと生唾を飲んだ。
(ここから飛び降りれば死ねる。)
低いフェンスは大した苦労もせずに越えることができる。足を上げ、フェンスの外へと出ようとするが、体が動かなくなった。
(でも、ここで死んだらどうなる?)
家族は悲しむだろう。
さして仲良くない友達までもが悲しみ、他人の目には"善人"に映るだろう。
私の夢は叶えられないだろう。
母は泣いて怒るだろう。
兄弟の成長は見れないだろう。
おいしいものが食べられなくなるだろう。
私という存在は薄れていくのだろう。
(そんなの、私の得にならないじゃないか。)
でも、生きていて何になる?
(なにもかも、わからない。)
結局、あれだけ死にたいと思った衝動は、たった数個の死ねない理由で、無に帰った。
(こんなんじゃあ、いつまでたっても変わらないね。)
今日もまた死ねず、明日は死ねることを願い、頭上に広がる青い空を見つめた。




