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退職届と二千万円
翌日――。
いつも通り出社した俺に、課長が大声で言い放った。
「田中、お前の成績は部内で最下位だ。来期のボーナスはゼロ、むしろ給料を減らしてやりたいくらいだ!」
社員たちの前で俺を笑い者にする。
だが、昨日から俺の心は妙に冷めきっていた。
「課長。実は今日、退職届を持ってきました」
「な、なにぃ!? 勝手なことを――!」
その瞬間、机の上に通帳のコピーを置いた。
残高――二千万円。
「なっ……!? ば、バカな……!」
課長の顔が青ざめる。
「どうせ裏で悪いことでもしたんだろ……?」
「違います。これは俺の実力です」
冷然と告げる俺。
社員たちがざわつき、今までの見下した目が一斉に変わった。
その時――。
【システム通知:悪人への“ざまぁ”成功 → ボーナス収入 ×100倍】
【追加収入:10万円 ×100 = 1000万円】
「……また増えた……!」
胸の奥で確かな確信が芽生える。
――このシステムさえあれば、俺はどこまでも成り上がれる。
歪んだ顔の課長を見て、自然と笑みがこみ上げてきた。




