第1話 基本理念。
アーダの所属するアグネスメイド派遣協会は、所属人数20名。もちろんその道のプロが育て上げられている。主にメイドの産休や急に使用人が大量にやめてしまった場合のつなぎ、当主の入れ替わりで一時的に使用人が大量に必要な場合などに先方からの依頼によって派遣される。派遣先の選定や派遣する人材の選定はやり手ババア、アグネス統括部長が行う。オーナーの名は伏せられている。
「今回のあなたたちの派遣先はイザーク伯爵邸です。お掃除メイドが宝石泥棒を働いたらしく、当主の奥様に右手を切り落とされました。それ以来、やめるメイドや侍女が多く、今回の依頼ね。期間は次の使用人が見つかるまで。」
今回アグネス部長の執務室に集められたのは3人。同世代なので組むことが多い。
お掃除メイドのアーダ。こげ茶のおかっぱ眼鏡。瞳は緑。
キッチンメイドのアメリ―。はちみつ色のおさげ。瞳は薄いブルー。
洗濯メイドのアリーナ。明るい茶色のお団子ヘアー。瞳も明るい茶色。
みんなア、から始まるのは、アグネス統括部長が自分の頭文字を取って、適当に名前を付けているから。本名はもちろん、実年齢も仕事仲間同士でも知らない。
「今回は、特にアーダ。右手を切り落とされないようにきれいに掃除してきなさい。」
「・・・はい。」
「この協会の基本理念は?」
「はい。生きて無事に帰ってくること。たんまり稼いでくること。です。」
「はい。良く出来ました。では、よろしく。」