僕は将棋の駒、歩
僕は将棋の駒の歩です。
歩は、一番弱い駒で、最初は前にしか進めません。
でも、敵陣に入ると、金お兄さんみたいに強くなれます!
だけどそれでも、金お兄さんみたいに大切にされることはありません。
何かあったときには一番はじめに、やられる役です。
僕は生まれた時から歩でした。
そして、どうしても僕は他の駒に生まれ変わることはできません。
僕は泣きたくなりました。
僕は、王様に言いました。
「僕は歩なんかに生まれたくなかったです。」
王様は、ちょっと困った顔をして、そのあとこう言いました。
「でも君は一番自由なのかもしれないよ?」
「自由?」
僕には、その言葉の意味がよくわかりませんでした。
「この世界で、君はどこにでも行けるじゃないか。ときにはあっちにいって私を狙ったり、そしてまたこっちにきて私を助けてくれたり。そう考えると、私なんかただずっと逃げまどってばかりだな。」
僕は、そんなことを考えたことがありませんでした。
考え込んだ僕を見て王様はさらに言いました。
「でも何よりも君にはいてもらわないとね。だって、君がいなかったらこの世界はないんだから。」
その意味はもっとわかりませんでした。
でも、僕は、やっと今まで聞きのがしていた言葉を聞けるようになりました。
「あと一歩があれば…」
「あの一歩があったから…」
僕は、もう少しこの世界を旅してもいいかなと思いました。