第5話 メイドの名前
「う~~ん。やっぱり眺めがいいね~~」
「そうだな……」
ミアは23階の高層マンションからの夜景を堪能する。
俺も少しばかりテンションは上がったが、やはり昨日の事が頭から離れてはくれない。
2人の幼馴染。恋葉と海斗の事が引っかかって。
「あの2人は知り合いなの?」
あの時、ゴブリンの銀行でばったり出くわした時。換金が終わったミアが声をかけたためお互いに何事もないかのように別れてしまった。
「知り合いというより親友だ」
「運命は残酷だね~~」
「簡単に言うな。この大戦に敗れれば、骨も残らないのは知っているだろ?」
「なら、2人と協力する?」
「分からない。とにかく明日学校に行って確かめてくる」
今日は日曜日だ。明日、月曜日になったら直接2人に聞くのが一番いいだろう。
できれば、戦いたくはない。
「もう寝るな」
「そう? もう少し夜景を楽しんだら?」
「悪いがそんな気分にはなれない」
俺は自室に入る。家具も一新され、どうにも寝付けなかった。
そんな俺の部屋に来訪者が訪れる。
「失礼します」
黒髪のメイドは深々と頭を下げ、近くにあった椅子に腰かける。
「クロだっけ。俺に何か用?」
「はい。昼間の傷の処置に参りました」
俺はガラスの刺さっていた肩の傷を見せる。思い出すと急に痛みがでてきて包帯が巻かれる度に痛みが走る。
「あ、すいません」
クロが何度も包帯を巻きなおすので、俺はタオルを噛み痛みに耐える。
「あれれ、お、おかしいな……」
結局、俺は自分で鏡を見ながら巻きなおす。
「もしかして不器用?」
「いつもはもっと上手にできるんです……今日はたまたまで……」
クロはしょぼんとして下を向いてしまう。
「私、お姉ちゃんなのにあんまり頼りにされてなくて。ドジっ子だから」
「出来のいい妹を持つと苦労するんだな……」
「そ、そんなことないです。シロはかわいい妹なので」
「シロとかクロとか、本当の名前はなんなんだ?」
「分かりません。私と妹は孤児なので……」
どうせ髪の色で適当に名前をつけたのだろう。ミアらしい。
「名前、もう少し可愛い名前にしてやるよ。そうだな……」
いざ名前を付けてあげるとなると、あまり良いのが思い浮かばない。
なんとなくミアの気持ちも分かる気がする。世のお父さん、お母さんは凄いんだな……
「クロナ。今日からはクロナと名乗るんだ」
ごめんクロ。そしてミア、俺のネーミングセンスのなさを謝らせてくれ。
「いい名前です。ありがとうございます」
そんな名前もこのメイドは嬉しそうにしてくれる。
「クロナはさ、妹と戦うことになったらどうする?」
「そうですね……。妹の方が強いので負けますかね。それに、戦う必要はないですし。私は妹の事が大切なので」
「大切か……。悪いなこんな変な質問して。おやすみ」
「おやすみなさい」
クロナは静かに扉を閉め部屋を出る。
明日、2人に会ってきちんと話し合おう。
きっとそれが良い。
俺は布団にくるまり、眠りについた。




