第3話 魔剣の力
「おい、どうすればいいんだ?」
俺は食器棚に隠れる少女に指示を仰ぐ。
「魔剣大戦なんだから、魔剣で戦いなよ」
魔剣ったって、そんなものどこにあるんだよ……
もう一度あの夢を見なければいけないのか?
「魔剣の召喚の仕方も知らないとはな……お前、面白いな」
男はマシンガンを捨て、右手に青色の魔剣を握る。
どういう原理だ……
マジックの類なのか……?
召喚の仕方なんて分からない。
『少年、力を求めるか?』
誰の声だ。聞いたことがある。あの夢のなかで……
『魔剣の力を受け入れろ。お前は素質がある。考えるな、感じろ……』
その声が終わらない内に俺の右手には漆黒をまとった魔剣が握られていた。
「考えるな、感じろ……」
「何を言ってるんだ?」
サラリーマンの男は不思議そうに俺に尋ねる。
「なあ、一つ聞いてもいいか? あんたなんで俺みたいな素人を狙った?」
「なんで? 素人狩りをして何が悪い。危険な芽は早めに摘み取るのが普通だ」
素人狩り……。どうやって俺の居場所や魔剣の所持を知ったのかは謎だが、これが奴の魔剣の能力なのだろうか?
「よそ見は厳禁!」
俺は男の攻撃を咄嗟に防ぐが窓ガラスを割り向かいの家の壁まで吹き飛ばされる。
普通なら死んでいる。魔剣によってある程度の身体能力の向上は見られるようだが、肩に窓ガラスの破片が刺さっている。
通行人たちはそんな俺たちを見て見ぬ振りしているのか、それとも本当にみえていないのか、何事もないように通っていく。
「どうだい? 少しは魔剣について分かったかい?」
男は長い前髪を書き上げメガネを拭く。
どうすれば勝てる……
とにかく今は情報が少なすぎる。
『破壊しろ少年』
まただ。
また俺の中で誰かが俺に話しかけてくる。
『魔剣を感じろ』
魔剣を感じる。
俺は漆黒に輝く魔剣の刀身を見る。
刀身は男の右腕まで延び、まるで斬ったかのように見えた。
斬っていない。
なのに斬れる。
そう思えて仕方ない。
俺は魔剣を肩の高さまで振りかぶり思いっきり振りかぶる。
「何をしている? 剣は届いてないぞ………………えっ!?」
男の魔剣を持つ右腕は斬り落とされていた。
正確には斬れたというより裂けたと表現する方が正しいだろうか。
「痛い……痛い……なんで、おかしい…………」
男は痛みで地面を転がりながらネクタイで必死に止血する。
白かったリビングの部屋は男の血で赤く染まり、俺も顔にかかった返り血を服の袖で拭う。
「少しは人の痛みが分かったか?」
「頼む、見逃してくれ。俺が悪かった。降参する……」
さっきまでの勢いは消え失せ、男は命乞いをする。
「君には選ぶ権利があるんだ」
少女は物影から出て来て俺の肩にそっと手を置く。
「頼む……私は死にたくない。妻と子がいるんだ…………」
「分かった。もう行け」
俺は男から視線を逸らす。
「甘いんだよガキが!」
男は左手で魔剣を拾い俺の脇腹を突き刺そうとする。
「良かったよ。アンタがどうしようもないクズで……」
次の瞬間、男の首から上は消えてなくなっていた。




