プロローグ 大戦の果てに望むもの
古の時代から魔剣はこの世界のいたる所で所有者を選び、幾度となく人々に力を与え争わせた。
それはやがて魔剣大戦と呼ばれ、多くの者がそれに参加した。
人々は魔剣大戦の先に何を求めるのか。
力か? 富か? 名声か?
たった一人の勝者は全ての魔剣を生み出した魔剣。ユリギニオンがどんな望みでも叶えてくれる。
どんな願いも。
ひとえに、死人を生き返らせることも。人間を超越することも。それは不老不死すらも叶えるという。
魔剣は人の欲を掻き立て競わせるが、その目的も真意も不明。
500年に一度、その戦いは訪れる。
初代の勝者。ひいては、最後まで生き残った男が現れてから今回で4回目。恐らく今回も多くの死者が予想される。だが、それも一興。
「そうは思わないか悪魔よ」
「何が言いたい……」「魔剣大戦の先にあるのは死体の山と勝者の栄光だけだぞ」
「私は今回の大戦を見届ける上で胸の高まりが収まらない。世界中の魔剣所有者、並びにそれを支える者たちが争い、勝利し、敗れその先にどんな願いを魔剣に望むのか……」
男は胸に掛けている十字架のネックレスを右手で握りながら、祈るように頭上に掲げる。
修道服に身を包んだ男は神父だろうか。
話の口ぶり的に、この魔剣大戦の監督者らしい。
男は紫色に燃える聖杯の中にある、人の名前の書かれた千切れた紙を眺める。
聖杯に満杯にかさばる紙を数えるのは難しいだろう。
だが、それも戦いが始まれば残るのはたった一枚だけ。
「君も変わっているね。自ら監督者になるなんて」
「誰かがこの大戦を見届ける必要がある。もちろん私は直接的に介入はしない。悪魔、それはあなたも同じでしょう」
「そうだね。私は今回も静観を貫くつもり。ただ……私にも生きる目的があるの。その時は……」
「知っての通り私達がこの戦いに手を出せば、待つのは悲惨な死だけだということをお忘れなく」
男は祈りをやめ、後ろを向く。
男にもこの大戦に思うことがあるらしい。自分の過去を思い出すように。
「戦いは既に始まっています。魔剣は世界中で所有者を選び、人々に力を与えるでしょう」
「そう……」
悪魔は影からでてくる。
その姿は醜い化け物ではなく、可愛らしい少女だった。




