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08. 破滅への台本を手にした日






 衣裳室の奥にはジュエリーボックスと呼んでいる私の宝箱がある。


 本来はマジックボックスという物で持ち主の魔力でしか開かない箱。

 オルフェは聖竜なので、人間の作った魔導具をある程度は解除できてしまうんだとか。



 私はジュエリーボックスの前に立ち手をかざす。


「開け」


 魔力を込めてそう唱えると、カチリと音を立ててジュエリーボックスが開いた。


 殿下とのお茶会の前にオルフェにお願いした通り、ジュエリーボックスの中にはあの小説が入っていた。

 私は本を手に取り、近くにあったスツールに腰掛けた。



「本の始まりは王立学院の入学から……」



 主人公のリリィ・モルト男爵令嬢。


 モルト男爵家は、一代前の当主の時代に運送業の経営に成功し、男爵位を手に入れ、東南部に小さな領地を持つ新興貴族だったはず。


 王国の東側は帝国と国境を接しているため、東側に領地を有している貴族はその国境を守らなければならない。



 しかし五年ほど前からモルト男爵家は充分な国境警備を維持することが出来ず、隣に領地を持つアズベリー伯爵家に国境警備を任せいる。


 そして、モルト男爵家にはご子息がおひとりだけだったはず。

 リリィという名前の令嬢は、社交界でも、小さな頃に覚えた貴族の系譜でも、一度も見た事がない。




「それに貴族らしくない名前……」


 思わず口に出た自分の言葉にある可能性が浮かび上がった。


「平民の子を、魔力量の多さを見込んで養子に迎え入れたのかしら? それとも男爵の愛妾の子?」



 爵位を持つ貴族の義務は、平民よりも多い魔力量で領地を豊かに保つ事だ。



 平民にも魔力はあるが、料理のため火を起こしたり、食器や衣服を洗浄したりする程度。


 その上、持てる魔法適性はほぼ全員がひとつまで。火魔法の適性がある者だけ火を起こす事ができるし、水魔法の適性がある者だけが水を使いこなし生活の助けにする事ができる。


 持てる適性がひとつであるのに、その力はそれほど強くはない。例えば、料理に火を使いながら部屋の暖炉を維持する事は難しいし、一食分の料理を作れば魔力が尽きてしまい体調を崩してしまう。



 そういう理由で現在のほとんどの平民は魔法を使う事なく、魔導具を使って生活している。

 自身の魔法を使う事がなくなったからか、近年では平民の中にもほとんど魔力を持たない者や使えない者も産まれるのだという。




 そんな中、稀に貴族に匹敵するほどの魔力量を持つ平民の子が産まれることもある。



 この国では、生まれてから六週間目に星の洗礼式と言われるものを受ける。


 この世界を作った星の女神に新しい命の報告をするのだ。平民の場合も簡易的なものが行われる。その際に魔力量と適性を知る事ができる。



 魔力量が普通よりも多い時、神殿は国に報告しなければならない。


 そして魔法をコントロールするために、学院の初等科へ四年間の入学が許され、優秀であればその後も学院に留まり魔法の才能を磨き、将来は魔術師の職を手にする事もできる。




「うーん……不自然すぎる。平民なら初等科で勉強しているはずだし、私が知らないだけで、もし男爵家の養子であったとしても家庭教師にある程度のコントロールの方法は教えられるはず」




 ところがこの小説の主人公リリィ嬢は、魔法のコントロールさえ出来ず、その膨大な量の魔力を持て余す危険な状態だ。


 小説内でも何度か暴走させている。



「やっぱりただのお話なのかしら……」





 そもそも主人公の設定に不明瞭な点が多すぎる。その他の登場人物も実際に存在する人物ではあるが、所々状況が違っている。


 私は学院の生徒として在籍しないし、殿下はもうご卒業されてしまっている。

 たとえ、このリリィ・モルトという令嬢が存在したとしても、私たちが出会うことは不可能に近い。




 それでも気になってしまうのは、私がこの本を見つけた時、精霊の力を感じたから。







* * * * * *






 あの日は王宮図書館へ借りていた本を返すために王宮へ上がっていた。


 本を返し終えて帰ろうと図書館の扉の方へ歩いていた時、突然クッキーのような甘い香りがした。



 人間と契約を交わした精霊は対価をもらい、対価を渡した人間の願いを叶える手伝いをする。


 クッキーなどのお菓子を好むのは、光の精霊。光の精霊は、人間に害を加えることはしないため、私は精霊が導くまま図書館の奥へと足を進めた。



 王国内で一番広い王宮図書館の最奥にある小さな本棚の中に、微かにきらきらと光る一冊の本を見つけた。



 これを見つけさせるように誰かが契約したのね……




 念のため辺りを見渡したが誰も見当たらなかったので、本を手に取ると光が収まった。





【ユリの花束を君に】





 なめらかな白い表紙に金色の文字でそう書かれていた。





 私は誰にも見られないように本を両手で抱え、来た方向へ踵を翻した。出入り口へ向かうまで、来館者とは一人もすれ違わず、司書さんも席を外していた。



 本を見つけた時から強くなっていた香りが一層強くなるのを感じていた私は、このまま持ち帰れという事なのだろうと思い、そのまま図書館を後にしたのだ。






本日から毎日1話ずつの更新になります! 週末には、また数話投稿して、シナリオが開始されるといいなと思い準備中です٩( 'ω' )و ブックマーク☆評価、いいねなどで応援してくださると励みになります! ここまで読んでくださった皆さま、ブックマークや評価、いいねをしてくださった皆さま、本当にありがとうございます(๑>◡<๑) シナリオ開始までまた明日もお付き合いいただけますと幸いです!

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