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いつか死ぬ心優しい勇者と幼馴染の文通  作者: 紫 凡愚
第2章 初めての魔人討伐
9/50

レイナ to ケイト 〜勇者としての自覚〜

紫 凡愚と申します! この小説は少々特別な文体となっていますが、逆に普通の小説よりも読みやすいので、気軽に呼んでください!

そして続きが気になる。良かったと思う方は、評価とブックマークをお願いします。もちろん、ここはこうした方がいいんじゃないの? といった指摘も感想等でお待ちしています。


 ケイトへ


 あなたの手紙を読んだわ。読み終わったあと、色々考えちゃった。


 三百年もの間、私のために誰かが死に続けていたなんて、思ってもみなかった。今、戦場で戦っている兵士たちも、私に希望を託しているのよね。

 私のために払われた犠牲は数えきれないほど多い。


 ケイトが言っていることは、否定しようのないくらい正しくて、真実だと思う。


 きっと今も、どこかで誰かの命が散っている。……でもあなたがいうことが真実なら、私が誰かを救っているというのも真実なのよね。


 私、もっとたくさんの人を救いたい。


 今更決断をするなんて、勇者失格だけど、それでもそう思ったの。私のために死んだ人がいるならば、彼らの思いを継いでたくさんの人を幸せにする。


 勇者っていうのはその称号以上の重さがあることをケイトのおかげ知れたわ。


 あれからもう一度、アルフレッドに会ったの。彼はもう魔獣や魔人で賞金を稼ぐ仕事を辞めるって。実家が漁師をやってるから、そこを継ぐって言っていたわ。


 死んだエリーやオスカーのためにできることは、アルフレッドの住む街を守ってあげることだわ。

 いいえ、きっとそれだけじゃない。今まで私のために亡くなった人にも家族がいたはず。残された家族や子孫は必ずこの世界のどこかで暮らしてる。そんな彼らの住む世界を守ることが勇者として私ができること。


 歴史上ずっと続いてきた魔人と人間の戦いに終止符を打つ。それが私の役割。


 私は本当の意味で「勇者」になりたい。「勇気ある者」ではなく、「勇気を与える者」に。

 今までの私は、今の私は、まだ「勇者」じゃない。魔王を倒して、いろんな人に勇気を与えてから私は「勇者」なれるの。


 でもケイトの理論で言うとね、私にとってあなたこそが勇者だった。私がどれだけケイトに助けられてきたか。勇気を与えられてきたか。


 自分で言うのもなんだけど、私って意外と臆病なところあるじゃない? 臆病なくせに大雑把っていうか……。


 最初に勇者に選ばれた時だって、本当は怖かったの。


 でもケイトのことを思い出したのよ。ケイトは黒髪黒目の忌子でしょ? この忌子っていう言葉さえ使いたくないけれど。

 ケイトは私と話すようになってから、気づいたら村のみんなの一員になってた。それは私の力ではなく、ケイトの力。実はそれってすごいことだと思うの。


 この国に色濃く残る差別の一つをあなたは消し去ったのよ。

 

 私はこんなにすごい人の幼馴染なんだからきっと魔王だって倒せる。

 そう信じて私は勇者という称号を賜ることにしたの。


 だから本当の意味で勇者というなら、あなたこそが勇者なのよ。誰よりも勇者らしい勇者。それがケイト。


 それからもう一つ決めたことがあるの。

 私はこれからもっと厳しい修行をするわ。今までだってキツいことたくさんしてきたけど、まだ足りなかった。これまでの私には覚悟が足りなかったの。三百年間の歴史の川に流された人々の意志を継ぐという覚悟が。


 亡くなった人たちの意志を継ぐ決意をしたら、もっと辛いことだって我慢できる。


 あと、これも大きな決断。もう勇者パーティーを組まないことにしたの。私を支援するのが勇者パーティーの役目らしいけど、彼らはなにも神様から選ばれたわけじゃない。人間が選んでるだけよ。


 神様が私を選んだなら、私一人で魔王を討伐できると思うの。


 まあ、これは詭弁かもしれないけどね。正直、もう目の前で私のために誰かが死ぬところを見たくないっていうのもある。でも、勇者パーティーを組まないでやっていけると思う理由もあるの。


 オスカーやエリーが生前に私に魔法を教えてくれたことがあったの。ケイトは魔法教育を受けたことないから分からないと思うんだけど、魔法には得意不得意があるのよ。回復魔法が得意なら、攻撃魔法が苦手、みたいな。


 私にはそれがなかったん。どんな魔法も扱えた。


 うぬぼれではなく私には力がある。一人で魔王を倒す力が。

 なぜ私がそんな力を持っているのか、それは分からないわ。でも理由なんて関係ない。私は死んだ人の期待、そしてケイトの期待に応える。それが大事なんだって気づいたの。


 私、もっと頑張ってみる。今度こそ、新聞を見てて。もう慢心しない。きっと輝かしい功績をあなたに見せつけるわ。


 最後になってしまったけど、ありがとう、ケイト。私、ケイトがいなかったら、立ち直れなかった。このことをずっと引きずってた。


 いつでもケイトはそうよね。私が辛い時に、的確な言葉をくれて、励ましてくれる。私たちはこんなに距離が離れているのに、あなたは涙を拭ってくれる。私、本当にケイトが……。


 ううん、この続きはいつかカイク村に帰った時に直接言うわ。


 このまま手紙を続けていたら、あなたに頼ってしまうかもしれないし、ケイトも忙しいだろうから、しばらく手紙はいいわ。次に私が堂々と新聞に載ったら、手紙を頂戴。これは私なりの決意表明だから、絶対に守って欲しい。


 前回はとても落ち込んでいて、ついつい普通にあなたの健康を願ってしまったわ。今回は何かからかってやろうと思ってたけど、それだと感謝が伝わらないから、素直に健康を祈ります。


 私の大切な人であるケイトがこれからも健康でいてくれますように。レイナより


作者の紫 凡愚と申します!

この作品が面白い、気になると思った方は是非、ブックマーク、コメント、評価お待ちしています。途轍もないやる気になります! タイトル通りストックは最終話まであるため、人気になればどんどん投稿ペース上げてくのでよろしくお願いします!

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