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いつか死ぬ心優しい勇者と幼馴染の文通  作者: 紫 凡愚
第2章 初めての魔人討伐
8/50

ケイト to レイナ 〜勇気を与える者〜

紫 凡愚と申します! この小説は少々特別な文体となっていますが、逆に普通の小説よりも読みやすいので、気軽に呼んでください!

そして続きが気になる。良かったと思う方は、評価とブックマークをお願いします。もちろん、ここはこうした方がいいんじゃないの? といった指摘も感想等でお待ちしています。


 レイナへ


 新聞を読んだよ。もちろん手紙もね。レイナは今、本当に辛くて、苦しいんだね。ただの幼馴染の村人の僕にでもその苦しさの末端くらいは分かる。


 僕も、両親を失った時そうだった。何もかもがどうにでもよくなって、ただ時間だけが過ぎるのを待つばかり。秒針の進む音と共に、後悔が胸の内を侵食していく。


 あの時こうしていたら。あの時こうしなかったら。変えられない出来事を悔やむだけの日々が続いていく。


 君は村に帰りたいと言っていたね。僕は、それを止めることはしないよ。辛いことがあったらいつでも帰ってきてもいいんだ。


 ……でもね、少しだけ考えて欲しい。


 レイナが帰ってきたい理由が、エリザベスさんとオスカーさんが亡くなってしまったことが原因なら、それは帰るべきではないと思う。


 いいかい? 今から僕が書くことは君の負担をもっと大きくするかもしれない。

 でも、ちゃんとそのことは理解しないといけないと思う、勇者としてね。


 僕はあくまでレイナの味方だ。敵ではなく味方として、あえて厳しいことを言うよ。


 勇者のために死んだ人は、何もその二人だけじゃない。


 今でも魔人と人間の戦争はどこかで起きてる。


 王国に家族を残して、魔人と戦う兵士がいる。そして彼らの大半が、その思い半ばで死んでいく。いつか勇者が魔王を倒してくれると期待を託して、天国へ旅立つんだ。


 しかもそれは今の時代の人だけじゃない。魔王が誕生してからの三百年間の話だ。三百年もの間、兵士たちは、いつの日か誕生する勇者のために死んだ。


 魔人に殺された一般人、僕の両親や君の両親だって、勇者が魔王を倒してくれることを願いながら命を落としていった。

 遺族である僕や、兵士の遺族だって勇者のレイナに期待を寄せている。この悲しみが二度と起きない世界を作ってくれると。


 レイナ、君は僕たちの想いの結晶なんだ。

 君は死んだ兵士、殺された一般人、遺族、全ての悲しみの上に立って剣を振るっている。


 もちろん、彼らの顔も名前も僕たちには分からない。でもそういった人が何百人、何千人、何万人といる、いや、いたの事実だ。


 君は初めて、仲間を失った。しかも、幸せの絶頂にいたのにも関わらずだ。僕だったらそれに耐えられなかったかもしれない。


 でも、レイナのために犠牲が生まれたのは、何もこれが初めてじゃないんだ。三百年間のありふれた犠牲の一部にすぎないんだよ。


 少し話は変わるけど、僕たちがグロモンスべアに遭遇した時に、僕がほとんど一人で倒したと手紙で書いていたよね。でもそれは違うんだ。


 僕は君が大きな怪物に一人で立ち向かう姿を見て、勇気が湧いたんだ。魔獣に挑む君の背中はとても小さいのに、かっこよく見えた。血だらけになっても立ち上がる君は、信託を受ける前から勇者にふさわしい姿だった。


 もしレイナがいなかったら、きっと僕はあの場で何もできずに死んでいたよ。


 君はあの時から僕の勇者だった。


 両親が消えた穴にレイナが入って埋めてくれた。笑顔を取り戻させてくれた。僕に魔獣と戦う勇気を与えてくれた。


 物語の勇者なんかよりも、君は勇者だった。


 グロモンスべアを倒した後に僕が言った言葉を覚えてる?


「レイナのおかげで、僕はまだ生きてる。ありがとう」


 君はその時、ずっと泣いていたから覚えていないかもしれないけど、僕は確かにそう言ったんだ。これが何を表しているのか分かるかい?


 レイナは仲間を犠牲にしてしまったかもしれない。でもそれと同時に、誰かを救うことができるんだ。


 カイク村に、エリクっているだろ。昼間から酒を呑んで、ろくに仕事もしない、あの酔狂エリクだ。

 彼はレイナが勇者として村を出てから、少しずつ酒をやめて、今では農作業を頑張ってる。君の存在が彼に元気を与えたんだ。きっとレイナに元気付けられてる人は、エリクだけじゃない。きっと国中の誰かが、君から勇気を貰ってる。


 君は数えきれない人の犠牲の上に成り立ってる。それと同時に、数えきれない人に勇気を与えてるんだ。


 勇者っていうのはきっと「勇気のある者」ではなくて「勇気を与える者」なんだ。

 

 君はオスカーさんとエリザベスさんという親しい人を失った。でもそれ以前に僕という親しい人を救っているんだ。

 もし君がオスカーさんやエリザベスさんのことを思い出して辛いなら、君が救った人のことを思い出して。君に命を助けられた僕のことを。


 それに僕が救われたのは命だけじゃない。この前の手紙に書いたろ? 僕はレイナに出会って笑顔を取り戻したんだ。もし君と出会っていなかったら、笑顔のない人生を送っていた。


 僕は君のおかげで、生きて、笑っていられるんだ。


 レイナは自分で思っている以上に強い人だ。気づかないうちに、僕を救っているくらいにね。

 勇者をやっている以上、アルフレッドさんみたいに君を恨んでしまう人はいるはずだ。でもきっと君が勇者として活動するなら、それ以上の人を救えるはずだよ。


 これ以上の言葉はもういらないよね。君はきっと立ち直れると信じてる。


 レイナの健康は相変わらず祈りません。こんなことで健康じゃなくなるなんて思えないから。ケイトより


作者の紫 凡愚と申します!

この作品が面白い、気になると思った方は是非、ブックマーク、コメント、評価お待ちしています。途轍もないやる気になります! タイトル通りストックは最終話まであるため、人気になればどんどん投稿ペース上げてくのでよろしくお願いします!

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