ケイト to レイナ 〜帰郷の誘い〜
紫 凡愚と申します! この小説は少々特別な文体となっていますが、逆に普通の小説よりも読みやすいので、気軽に呼んでください!
そして続きが気になる。良かったと思う方は、評価とブックマークをお願いします。もちろん、ここはこうした方がいいんじゃないの? といった指摘も感想等でお待ちしています。
レイナへ
レイナ、久しぶり。
新聞を読んだよ。すごいじゃないか。魔王軍幹部を一人で討伐するなんて。
チャンバラごっこではいつも僕が勝ってたけど、もう勝てなさそうだね。まあ、そう簡単に負けを認める気もないけど。
あの新聞が出てからカイク村はお祭り騒ぎだよ。カイク村だけじゃなくて、どこの街でも君の話題で持ちきりさ。
案外、レイナが魔王を倒して村に帰ってくるのも早いかもしれないね。
ま、期待はしてないけどさ。重圧になっちゃうだろうしね。自分のペースで強くなって。くれぐれも無茶はしないように。
……なんか僕、レイナのお母さんみたいだね。
君のお母さんがどんな人だったのかは知らないけど、こんなに心配するなんて家族みたいだ。僕たちは小さい時からずっと一緒だし、家族みたいなもんだけどさ。
家族で思い出したけど、フリンはすくすくと成長してるよ。この前は初めて歯が生えたんだ。
赤ちゃんの歯は、すごく小さいんだ。僕たち大人の歯とは比べ物にならないくらい。でもどこまでも白くて、その小ささには似合わないような強さがある。大人の歯はもっと大きいのに赤ちゃんの歯に勝てる気がしないんだ。
……何を言ってるんだろうね、僕は。歯が大きいとか小さいとか。でも思わず、そう考えちゃうんだ。赤ちゃんって不思議な生き物だよね。
赤ちゃんってなんていうか、小さいだろ? 肉体的な意味じゃなくてさ、こう雰囲気というか、存在というか。そんな小さな体にいつ死んでしまってもおかしくないような儚さを持ちながら、泣いている時は誰よりも生に満ちているんだ。
フリンを見て、たまに思う。君みたいだって。
……ごめん、これはレイナをからかっているわけじゃない。別に君が、泣き虫だって言ってるわけじゃないんだ。(なんか誤解を解こうと言葉を重ねるごとに、どんどんレイナをからかってしまうから、もうからかっているってことでいいや。)
僕が言いたいのは、儚いけど生きているところがそっくりだってことだよ。
僕はね、レイナが勇者に選ばれたと知った時、怖かったんだ。レイナはあの時、余裕そうな顔をしていたから、同じ気持ちだとは思わなかったよ。
村のみんなは喜んだり、中には僻んでる人もいたけど、僕はそのどれでもなかった。君が死んでしまうかもしれないっていう恐怖だけが胸に残った。
そして今でもその気持ちは消えていない。
僕、レイナが死ぬのはいやだよ。手紙の最後には、「健康なんか願わなくても、健康だろ」なんて冗談を書いているけど、毎回不安で仕方がないんだ。いつか君が死んでしまうんじゃないか、もう手紙は帰ってこないんじゃないかって。
僕は、レイナがどれだけ功績をあげても素直に喜べない。それは君がもっと危険な相手と戦うことを意味しているから。
いきなりこんなことを言って申し訳ないと思ってるよ。仲間が亡くなっている君を慰めたのも僕だし、勇者としての役割を説いたのも僕だ。
矛盾してるよね。君に勇者として生きることを励ましながら、勇者として生きてほしくないって思うなんて。
でもどうしてもこの思いを君に告げずにはいられなかった。ここ最近、レイナが死んでしまうかもしれないって考えちゃうんだ。
レイナはどんどん遠くに行ってしまう。実力もただの村人の僕とはかけ離れていく。そうして離れて、離れて、いつか死という手の届かないところへ行ってしまう。
少しでも君についていこうと、僕はこれでも結構修行してるんだ。ただの田舎の村にいる僕が強くなったところで何も意味ないけどね。でもそうしないと、レイナがどこかに行ってしまう気がして。
君がいなくなってもうだいぶ経つ。カイク村はレイナがいないと妙に静かだ。ただ風に紫苑が揺られる音と、世間話、あとはフリンの泣き声くらいしかない。
うるさいくらいに響き渡っていたレイナの悪戯っぽい笑い声が恋しくなる日が来るなんて思いもしなかったよ。
矛盾していることを言ってるのは分かっているんだ勇者として頑張っている君の意志の妨げになることも分かってる。でも心配なんだ。ごめん。
一度、カイク村に帰ってこない? レイナ。
久々に、君と会って話したいんだ。もう一度、この目で君の笑顔が見たい。レイナは功績もあげたんだし、一回くらい帰ってきても文句を言われないはずだ。
なんか久々の手紙なのにしんみりさせちゃってごめんね。手紙の返信を待っているよ。
レイナがいつまでも元気でいますように。ケイトより
作者の紫 凡愚と申します!
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