双子なんだから婚約相手はどちらでもいいとどうせ同じだろと王太子殿下にいわれてしまいました。妹は別にそれでもいいといったのですが、なぜか私が婚約者に内定し、激高した妹が私に罠をしかけて…。
「別に双子なんだからどちらでもおなじだろう、どちらでも別にいい」
私か妹か、どちらに婚約者をするのか? と聞かれた王太子殿下の答えがこれでした。
私たちは茫然とその言葉を聞いていたのです。
「……同じということはないです殿下、私と姉は違う人間ですわ!」
「どちらが姉か妹か、僕には区別がつかない。だからどちらでも同じだ」
氷の王太子と言われた方の言葉がこれでした。顔色一つ変えず、でどっちにするんだ? とこちらに聞いてきたのです。
「私は妹のローズですわ。私が!」
私はこれを聞いて妹とはいえ、向上心というかプライドが高く、上を目指していた双子の妹、彼とならお似合いかななんて思ったのです。
「妹でよろしいかと……私は辞退します」
私は妹に決めると思ったのですが、どちらでもいいとは何事か! と殿下が周りにさすがに怒られ、総合的に見て少しだけ魔力が上回る私に婚約者が内定しました。
出来たら妹のほうがよかったのですが、決まったものは逆らえません。
「どうしてお姉さまなのよ!」
「あなたに決まると思っていましたが……」
怒る妹、ため息をつく私。双子といえども妹は気性が荒く、私が無口、妹のほうが外面がよく、評判は実はいいのです。
私は陰気な姉とよく言われましたから。
だがしかし、婚約者に決まったものは仕方ないそう思っていましたが……。
「君が罪を犯したと聞いたが、本当か?」
「え?」
「使用人をいじめ、挙句の果てに我が母を階段から落とそうとしたと……」
「王妃様を? そんなことはしておりませんわ!」
王妃様は確かに気位が高く、我が子である殿下を異様に愛する方でちょくちょく嫌味などは言われましたが、階段から突き落とそうとしたことなどありません。
使用人をいじめたことも……。
「私ではありません、もしかしたら妹が……」
「君の妹は病気で寝込んでいるらしく、一か月以上も起き上がれないと聞いた。こんなところに来られるはずがないと」
私が王宮に王太子の婚約者として行儀見習いで入り、実家と連絡をとると王妃様が小言を言うので、ほぼ手紙などもしておりませんでしたが。
あの健康な妹が?
「……残念だ、まあ妹のほうでもいいかとは思う。婚約は解消、罰はまたおって沙汰する。部屋で謹慎をしていろ」
淡々と殿下は言います。顔色一つ変えずというのがやはり氷というあだ名にふさわしいというか。
私はふうとため息をついて、妹のことだから嘘かもしれませんとは言いました。
しかし聞き入れてもらえず、私室に軟禁されることとなり、妹が次の婚約者、私は修道院送りが決まりました。
納得がいきません……絶対あの子です。
「双子だから同じだとは限りませんわ」
私は妹と殿下の婚約式に呼ばれました。妹が是非にといったそうですが、見せびらかしたかったにに違いありません。絶対に許すわけにはまいりません。
「私の問いかけに答えなさい。ローズ、あなた病で寝込んでましたの?」
「……私は病で寝込んでなどおりませんわ」
婚約式で私はローズに笑顔で問いかけました。妹はいえいえ寝込んでなんかいませんと首を振ります。
皆が目を丸くしてローズを見てますが、私が洗脳系の魔法の素養を持つということを皆が知らないだけです。
ローズにはこの魔法の素養がなく、あまり人に知られるとまずいものなので隠すようにと魔法判定人から言われていたので黙っていただけです。
自白の魔法をかけてはいたのですが、これほど効果があるなんてねえ。
「私のふりをして王妃様を階段から突き落とし、使用人をいじめたのもあなたですかローズ?」
「ええそうですわ! だってお姉さまが婚約者なんて耐えられませんもの、私こそが王太子の婚約者にふさわしい! お姉さまなんて陰気でふさわしくありませんわ!」
みんなの驚きがおかしいですわあ。でもさすがにぺらぺらと話す様子に殿下が不信を持ったようです。
私は殿下に向かい、にっこりと笑いかけました。
「殿下、双子だからどちらでも婚約者はいいといわれましたけど、もしかして王妃様がうるさいから適当に婚約者を決めておこうと思われたので?」
「そうだ、母上からしたらどの令嬢でも気に入らないのは同じだろう、ならだれでもいいと思ったんだ。僕の愛する母上が妻を迎えるのをよしとしないのはわかっているが、どうしようもない、ああ母上、母上、母上……」
まずローズに魔法をかけ、そのあと殿下にもかけておいたのですが、目を見つめて呪文を唱える。
催眠状態に移行するのがローズのほうがとても速かったのは精神耐性の違いでしょうか。
殿下は少々手こずりそうだったので、飲み物に催眠を加速させる薬草を入れておいたのです。
これは実際、私の魔法だとわかれば不敬罪です。なので洗脳系の魔法は使いたくはなかったのですがね。
でもいつも妹が私のふりをして悪さをして、私に罪をおしつけるのが我慢ならなかったのですわ。
洗脳系魔法をとくと、二人がどうして? といったようにとても驚いています。
周りは大騒ぎになり、私はにこりと笑って、私は無実ですわよねと言葉をかけました。
このあと、私の魔法はばれることはなく、妹は王妃様を傷つけようとした罪で修道院送りとなり……。
王妃様を愛していると皆の前で告白した氷の王太子様は面目をなくし、引きこもっています。
しかしこの魔法、割と万能ですわね。使いこなせれば、世界征服……無理でしょうね。
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