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異世界生活向上委員会  作者: 保坂紅玲愛
第一部 英雄
9/13

ディネロバンコにて

 「あー、えっと、俺、今まで北の辺境僻地で育ってきたし、自分が魔力持ちだってこと、今日知った。だから、魔法の世界について何も知らないんだ」

 ・・・魔法に限らずこの世界のことは何も知らないけどな。

 「あ、そっか……ごめん。じゃあ、このリストに書いてあるやつの中にも分からないのがあるよね?」

 悪遊は俺に謝ると、事細かに教えてくれた。

 「まず、『ミニステリオ』っていうのは魔法界専用の政府さ。本部は王宮にある。ここで働きたい人はカシミールで文官コースを取るんだ」

「他にどんなコースがあるんだ?」

「魔術師コースと武官コース。僕は武官コースがいいなぁ。剣使い、かっこいいだろ?」

 そう言ってブンブンと腕を振った。

 「杖はもちろん、僕達か魔法を使うのに必要なものだ。武官コースでは杖を武器に変身させて使うんだ」

 ・・・杖が武器になるのか。

 「それで、箒は僕達魔法使いの移動手段さ。まぁ、魔術師コースを取れば箒無しでも飛べるようになるんだけどね」

 ・・・なるほど。

 「羊皮紙ノート……はさすがに分かるよな?」

 「あぁ」

 いや、分からん。実物にお目にかかるまで黙っていよう。

 「羽ペンとインクも分かるだろ。自動書記機能は知らないよな……文字通りだよ。魔力を流して書いてほしいことを言うと、自動で書いてくれるんだ。カシミールで使用が許可されてるのは文官コースだけだけど」

 ・・・便利そうだな。

 「魔法石は魔力をためるための石さ。でも、ミニステリオ指定のやつはEランクだから、魔力を込めすぎると割れるんだ。ランクが高ければ高いほど沢山魔力を込められるけど、その分値段も高い」

 ・・・この世界にもランクが存在するのか。

 「で、最後の調合鍋は回復薬とかを調合するための鍋だよ。僕はお下がりを使うけど……」

 民家のような家の前で悪遊は立ち止まった。

 「着いたよ。ここがディネロバンコだ」

 「銀行には見えないけど……」

 訝しげな表情をする俺に「まぁまぁ」と言いながら悪遊は中に入った。

 「ようこそいらっしゃいました、ディネロバンコへ。ご用件は何でしょう?」

 そこにいたのは小さな可愛らしい妖精だった。

 「お金を卸すのと、鍵の登録者の変更です」

 「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」

 そう言うと妖精はパチン、という音と共に消えた。

 「あれは何だ?」

 「アダデルディネロだよ。ディネロバンコの職員はみんなあの妖精さ。でも見かけに騙されちゃぁいけない。あいつら強盗とか入ると凶暴だから……」

 悪遊が説明していると、さっきのアダデルディネロがパチンという音と共に現れた。手には石を持っている。

 「魔法石に触れてくださいませ」

 悪遊が魔法石に触れると、金属製の鍵が悪遊の手に現れた。

 「じゃあ僕はお金を卸してくるから、木太郎はアダデルディネロの指示通りに手続きをすればいいよ」

 そう言い残すと悪遊は左の壁にある扉に鍵をさし、中へと入っていった。

 「さぁ、次はあなたですね。お名前をどうぞ」

 アダデルディネロの声にハッとした俺は慌てて答えた。

 「れ、冷蔵木太郎です」

 「冷蔵様ですね。それではこの魔法石に触れてくださいませ。親と子では魔力の属性が一致していますから、あなたが冷蔵ご夫妻のお子様であれば鍵が現れるはずです」

 今まで出会ってきた人達は俺を見るなりギャーギャー騒いでいたが、アダデルディネロは俺を見ても微笑むだけだ。不思議な気持ちで魔法石に触れると、俺の体から何かが吸い取られた。

 「うわっ!?」

 慌てて石から手を離したが、何も起こらない。

 「冷蔵様は魔力の扱いに慣れていらっしゃらないのですね。大丈夫ですよ、カシミールで習うことができますから」

 アダデルディネロが言い終わると同時に、俺の手の中に鍵が現れた。

 「拝見させてくださいませ……確かに冷蔵ご夫妻のものです……登録者の変更をしなくても鍵は使えますが、接続が悪いですね。登録者の変更をしたほうが良いでしょう。冷蔵夫妻の資産をそのまま受け継ぐ形になります」

 ・・・遺産相続って訳か。

 「では、鍵の魔法石に自分の魔力を込めてくださいませ。鍵の色が変わるまでですよ」

 俺は鍵の魔法石に触れた。さっきの吸い取られた感覚のやつが魔力なのだろう。石に触れている手に魔力を集中させると、一瞬でえんじ色からシルバーに魔法石の色が変わった。俺は魔法石から手を離した。

 「あら、冷蔵様。色が変わるまで手を離してはだめですよ」

 「違います、色が変わったんです」

 「………………………は?」

 アダデルディネロはあんぐりと口を開けて鍵の魔法石に目を向けた。

 「……本当だ……確かに変わっている……でもこんな一瞬で?一体どれだけの魔力を持っているのでしょう……」

 「あのー、これで終わりですか?」

 俺が聞くと、アダデルディネロはハッとして微笑みを浮かべたが、若干口元が引きつっている。

 「えぇえぇ、もちろんです。お金を卸すのでしたら、右側のドアからご利用くださいませ」

 そう言い残すとアダデルディネロは奥へと飛んでいってしまった。

 俺は右側のドアの鍵穴に鍵をさした。カチャリという音がしたので俺は扉の中へと入った。

 そこに広がっていたのは硬貨と紙幣の山だった。

アダデルディネロの身長は15cm位です。鍵の長さは10cmです。小さいですね。

鍵の登録者を変更する場合、前の使用者の魔力を追い出すために普通の人だったら1分以上かかります。当然魔力も減ります。手に魔力を集中させるだけで自分の両親の魔力を上回ることができる木太郎が異常なんです。

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