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異世界生活向上委員会  作者: 保坂紅玲愛
第一部 英雄
7/13

君夫家

 窓から見える景色が真っ暗になったと思った次の瞬間、景色は一変した。

 レッドカーペットが敷かれた、豪華な螺旋階段が窓の向こうに見えたので、俺と猫子は上に向かって「着いたよ!」と叫んだ。

 ・・・ん?なんで家の中にいるはずなのに、外に螺旋階段が見えるんだ?

 猛烈に嫌な予感がした俺は、猫子を連れて玄関のドアを開けた。そして驚いた。

 「うわぁっ!?」

 俺の目が正しければ、目の前には口をあんぐりと開けてログハウスを見つめている青年としっかりしてそうな女の人がいた。そういえば俺たちの家に君夫守則(きみおともりのり)とかいう人がいるって言われたような……

 「えっとー、君夫さんですか?」

 俺は家の中にログハウスがある、この不可解な状況を理解することを放棄して2人に声を掛けた。

 「まぁ、冷蔵家のお二人さんじゃないの!あぁ、なんと痛々しい赤い髪……」

 なぜ赤い髪が痛々しいのだろうか?女の人の言葉に猫子も首を傾げていると、髪をきっちり七三分けにした青年が歩み寄ってきた。

 「やぁ木太郎君、猫子ちゃん。初めまして。僕は王立カシミール学院エストゥディアンツ寮の寮生監督生にして高等部第3学年首席の君夫守則(きみおともりのり)だ。きっと君達は僕のいるエストゥディアンツに入れるさ。安心したまえ。僕がいるところは絶対的に安全だ……。どうぞよろしく」

 確信した。この人は規則大好きマンだ。いや、大好きどころじゃない。規則愛してるマンだ。

 「2人とも随分と成長したんだねぇ。私は君夫陽向(きみおとひなた)。おばさん、と呼んでかまわないよ。学生時代は冷蔵夫妻の大の親友だったわ……。2人ともそっくりね。あぁ、おいたわしや……」

 両親のことを思い出したのか、泣き崩れそうになった君夫おばさんを、慌てて俺は支える。

 「初めまして、俺は冷蔵木太郎です。こっちは妹の猫子(ねこ)。今日からここに住みます。よろしくお願いします」

 俺と猫子が挨拶をすると、君夫おばさんはニコッと微笑み、ログハウスを見て溜息をついた。

 「……にしても、あの2人はやってくれたねぇ。家の中にログハウスごと転移させるなんてバカなことを……」

 猫子が慌てて君夫おばさんに弁解する。

 「あの、虚弥と素弥を責めないであげてください!ログハウスを王都に移したいって言ったのは私なんです……」

 「おやまぁ、そうだったのかい!にしても、転移の呪文さえまともにできないなんてあの子達は一体……」

 ブツブツと呟きながら君夫おばさんはログハウスに杖を向けて「バモス レイゾウ ハルディン」と唱えた。すると転移陣が現れ、ログハウスはブォンという音と共に消えた。

 「これで大丈夫。ログハウスはこの家の庭に転移させたからね」

 ・・・どんだけ広いんだ、この家は?

 レッドカーペットの螺旋階段といい、ログハウスがまるごと入る庭といい、こんな豪邸に俺達は住んでもいいのだろうか?

 「あの、この家の費用とかはどこから出てきているんですか?」

 心配になった俺は「今年こそはエストゥディアンツが……」と何やらブツブツ呟いている守則に聞いた。

 「ん?……あぁ、心配することはない。冷蔵夫妻の貯金から出ている。君達のために残されたお金はまだ沢山あるから安心したまえ」

 ・・・どんだけ金持ちなんだ!?

 どうやら両親は相当の大金持ちだったらしい。

 「やぁ、木太郎、猫子ちゃん。5分前振りだね」

 「お、ログハウスは無事に転移できたんだな」

 金銭感覚にくらくらしていると必滅山兄弟が転移陣で現れた。

 「こら、2人とも!ログハウスを庭に転移させたのはあたしだよ!全く、家の中に転移させるなんてどういうつもりだい!?」

 「それに、冷蔵家の荷物!僕の頭に降ってきたぞ?どうしてくれるんだ! 」

 やっぱり頭の上に降ってきたのだ。

 必滅山兄弟は肩をすくめて顔を見合せ「してやったり」という顔をした。

 「まあ母さん、説教は後にしてくれないか?特に木太郎は買うものが沢山ある。悪遊(あゆう)とでも一緒にハタン街まで買いに行けばいいんじゃないか?」

 またよく分からない街名が出てきたが、それよりも俺は虚弥の言った「母さん」が気になった。猫子も首を傾げている。

 俺達の疑問を察したのか、守則が耳打ちしてきた。

 「あの2人も両親がいないんだ。O.N.Iとの戦いで殺されてしまってね。今は君夫家が引き取っているけど、名字は必滅山のままにしているんだ。2人がそう希望したからね」

 どうやら必滅山兄弟も孤児だったらしい。猫子も驚いて必滅山兄弟をチラリと見た。

 「まぁ、あまりこの話は2人にしないであげてくれ」

 そういうと守則は「悪遊を呼んできます」と言って「バモス キミオト カサ」と唱えて消えた。

 「家は隣なんだから歩いていけばいいのにな」

 「自分はきちんと魔法が使えるってことを見せつけたいんだよ。全く、監督生も大変だぜ」

 「え、2人とも隣に住んでるの?」

 猫子が顔を輝かせた。どうやら猫子は必滅山兄弟を気に入ったらしい。

 「そうさ。いつでも遊びに来いよ。面白いものが沢山あるから」

 「はいはい、お喋りはその辺になさいな。荷物を片付けるわよ」

 俺と猫子は手作業で、君夫おばさんと必滅山兄弟は魔法で荷解きをしていると、後ろから「悪遊を連れてきました」と声がした。振り返ってみると、守則とおどおどした金髪の美少年が立っていた。

必滅山兄弟も孤児でした。現在は君夫家で大暴れしてます。

君夫家は子供が沢山います。長男の文哉(ふみや。王宮で働いてる文官)、次男の笛悟(ふえご。元エストゥディアンツ寮の監督生。卒院済み)、三男の守則(現エストゥディアンツ寮の監督生)、必滅山兄弟(どっちもエストゥディアンツ寮の寮生。中等部3年生)、長女の梨莉葉(りりは。君夫家唯一のプリメラス寮生。「カシミールの三大美女」と称されるほどの美人。中等部2年生)、四男の悪遊(あゆう。木太郎と同い年)、双子の弟妹、蓮都と姫秋璃(れんと、めあり。王立カシミール幼等院のエース。幼等院6年生)。必滅山兄弟も合わせると9人ですね。うん、すごい。

あ、カシミールには全部で4つの寮があります。エストゥディアンツ、プリメラス、コノセール、ドゥエルメンの4つです。

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