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異世界生活向上委員会  作者: 保坂紅玲愛
第一部 英雄
6/13

転移陣

 どうして荷造りをするのか?と聞くと、必滅山兄弟は「王都に君達のための新しい家が建てられたんだ。かつて君達が住んでいたところにね」と教えてくれた。まさか転生1日目にしてこの家を離れることになるとは。

 「そういえば……どうして今日推薦状を持ってきたの?」

 俺が聞くと、必滅山兄弟は目を丸くした。

 「なんと!英雄は自分の誕生日をお忘れになっている!」

 「猫子ちゃん、祝ってやらなかったのかい?」

 どうやら今日が誕生日だったらしい。どうして教えてくれなかったんだ、と猫子に視線を向けると、「あはっ、すっかり忘れてた!おめでとー」と言いながら俺の方に近づいてきて、真剣な顔でこう囁いた。

 「お兄ちゃんが記憶喪失だってことは知られない方がいい。だから黙ってて」

 あまりの剣幕に俺が「……分かったよ」と渋々言うと、猫子はニコッと微笑んで「じゃあ、普通は13歳の誕生日に推薦状が来るのね?なんか私、1年も早くもらえて得しちゃった♪」とスキップしながら荷造りに取り掛かった。

 俺は壁に掛かった写真を指差してぎゃーぎゃー騒いでいる2人に話しかけた。

 「あの……2人はその人のこと、知ってるの?」

 すると2人はバッと振り返り、またぎゃーぎゃーと騒ぎだした。

 「おいおい、世界で最も偉大な魔法使い、サンタルチーアを知らないのか!?」

 ・・・ものすごく偉大そうな名前だ。

 「カシミールの学院長だぜ?でも、なんでここに……?」

 猫子がパタパタとキッチン用品を抱えながら言った。

 「私達、そのおじいさんに育ててもらったの。まさかサンタルチーア本人だとは知らなかったけど」

 どうやら猫子も初耳だったようだ。

 「ひょえー!君達、世界で最も偉大な魔法使いに育てられてきたんだね!そりゃすごいや!」

 「だから学院長は12年間も姿を現さなかったんだ!去年の学年末パーティーに突然やってきた時にはびっくりしたぜ。『やぁ諸君、初めまして。ワシは王立カシミール学院の学院長、サンタルチーア・ボティッチェリ・トム・ヒッポラクテースじゃ。ワシは12年間の大切な務めを果たし、今カシミールへと戻ってきた。ワシが言いたいのは3語だけ。諸君、飲んで、食うがよい!』ってな。もうお祭り騒ぎだったぜ。今までで1番豪華な晩餐だったな……」

 その後も必滅山兄弟の演説は続いた。何を言っているのかよく分からなかったが、とりあえずサンタルチーアはすごい人なのだということはよく分かった。

 

 2人が魔法で手伝ってくれたおかげで、荷造りは早く終わった。

 「こんなに沢山の荷物、どうやって運ぶの?」

 猫子の問いに虚弥はニヤリと笑った。

 「もちろん、魔法さ」

 そう言うと杖を荷物の方へ向け、「バモス レイゾウ カサ」と唱えた。すると、荷物の上に魔法陣が現れた。

 「あれは『転移の呪文』だよ。杖を転移させたいものに向けて、『バモス』の後に転移させたい場所を言うんだ。カシミールで1番最初に習う呪文さ。まぁ、虚弥は正しい位置には転移できないだろうけど」

 素弥がそう言ったとき、荷物がブォンと消え、魔法陣の中から「うぐっ!?」「守則!大丈夫かい!?……さてはあの2人だね……」と話し声が聞こえてきた。

 猫子が驚きながら魔法陣を指差した。

 「魔法陣から声が聞こえる!」

 「5秒間だけ向こう側の状況を知ることができるんだ。多分、守則の頭の上に降ってきたんだろ」

 虚弥が楽しそうに言った。

 「あいつ、推薦状を渡しに行けないって分かったとたん君たちの新しい家に陣取ってさ、『僕は監督生だ!冷蔵家の手伝いをする義務がある!』って。単に英雄の君達に自分のことを知ってもらいたいだけだぜ」

 監督生とはカシミール学院の各寮で自寮の生徒をまとめるリーダーだ。俺はなんとなく、守則は規則大好きマンなのだと思った。

 「お喋りもその辺にして、とっとと移動してしまおう。やることが沢山あるんだ」

 素弥がそう言いながら俺達を外へ行くように促した。

 「2人とも。目の前に赤いカーペットが敷かれた螺旋階段が見えたら、頭上の魔法陣に向かって『着いた!』って叫んでくれ。いいかい、すぐだよ。それじゃあ『バモ━━』」

 「待って!」

 虚弥が呪文を唱えようとした時、猫子がそれを遮った。

 「あの、その、えっと。このログハウスは私達が育ってきた思い出の家なの。でも、王都に移ってしまえばもうここに来ることはないでしょ?私、寂しくって……。だから、その、このお家も一緒に王都に移せないかなって……」

 「猫子、それはさすがに━━」

 「できるさ」

 嫌な予感しかしない。

 「そうだな……2人とも中に入ってくれ。家ごと君達を転移させる」

 猫子はパアッと顔を輝かせて、素弥に言われた通りに中に入っていった。俺はチラリと2人の方を見たが、2人とも自信満々で「大丈夫」と言うので、猫子に続いて家に入ることにした。

 「俺だけじゃ魔力が足りない。虚弥も手伝って」

 「りょ」

 俺達が中に入り、戸締まりをしたのを確認した2人は、ログハウスの屋根に向かって杖を向け、「バモス レイゾウ カサ!」と唱えた。

これから本格的にファンタジー要素が出てきます。バモス!

サンタルチーアのイントネーションは「サンタ・ルチーア」じゃなくて「サンタル・チーア」です。私は「サンダル爺や」にしか聞こえませんでした。 

どうでもいい設定ですが、木太郎達が住んでる街は「スコラテ街」って名前です。住人は冷蔵兄妹だけ。

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