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「これは」
「スカイジュエルウォッチだわ」
透明になった小箱のふたからのぞく腕時計。澄んだ空色の円い宝玉を文字盤とするそれは、英麻とみなみが身につけているのと同じ、スカイジュエルウォッチだった。ちなみにベルトの色はオレンジだ。
「俺たちがここへ来た一番の目的は君たちにこれを渡すことなんだ。三人目のタイムアテンダント候補の判定に立ち会ってもらうために」
「三人目?」
英麻は目をぱちくりさせる。
「また発見されたんだよ。英麻ちゃんやみなみちゃんと同様、時の花びらに触る力を持つとされる女の子が」
「えっ!?」
「つまり、その子も時の花びらが201X年に現れた日の夜、夜空を漂流中の花びら十二枚を直接、見たってことになる。これは意外と早くわかってたらしいけど、三つ目のスカイジュエルウォッチの製作をウラ先輩がずっとボイコットしちまってた関係で今頃になって最終判定をすることになったんだ」
「で、二人にやってほしいのがその判定の立ち合いなのだよ」
メグロがわざとらしく腕を組んでみせた。
「ここにあるスカイジュエルウォッチを件のタイムアテンダント候補の女の子がキャッチできるか否か、それを見届けてほしいんだ。キャッチできたら、めでたく三人目のタイムアテンダント誕生、その子も君たちスカイフェアリーズの仲間入りってわけ」
りんご片手にミサキが後を続ける。
「最終判定の方法は基本的にみなみちゃんの時と同じだ。判定を見届け、候補者の少女がタイムアテンダントと見なされた場合は事情説明をし、指定日時に遅れることなく共にタイムスリップする、というのが、理想的な流れと言える。花びらに触れる人数が多ければ、回収任務の成功率も高まるだろう。もっとも、君たちの力量次第だけど」
英麻の心に妙なやる気の火がついた。
全部ちゃんとできたら、あいつを見返せるかも。
頭の中に英麻お得意の勝手な想像が広がっていく。最終判定の立ち会いから回収任務までを完璧に遂行した英麻がどうだ、とばかりに思う存分、ハザマをコケにしているという図が。
「わかりました!最終判定の立ち会い、その後の事情説明とタイムスリップ、そんでもって今回の回収任務、すべて成功させてみせますっ。さーて、まずは英気を養わなきゃね」
小さくファイティングポーズを決めると、英麻はそれまでほとんど手をつけずにいたアランフェスのスイーツを掃除機のごとく、ぺろりと平らげてしまった。カタギリの目が点になる。
「すげえな」
メグロがハハッと笑った。
「いいぞ、英麻ちゃん。その意気だぜ」
「ハイ、頑張りますっ。よーし…この足立英麻、スカイフェアリーズの務めを成功させて、にっくき性悪のハザマをギャフンと言わせて見せるわよ」
「何か、力入れるとこ違くない?」
みなみの突っ込みにもかまわず、英麻はさらにこう続けた。
「目指せ、打倒ハザマよッ!」