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空色の機体がゆっくりと地面に近づいていく。

離陸時と同じ、安土城領内の野原のようになった場所に向かってみなみがペダルを漕ぐ。すいーっと滑らかに降り立つスピカ。着地成功だ。ハザマたちが走ってきた。

「江…」

舞子は気を失った江姫の手を握った。

「心配しなくていいよ」

スピカから降ろすため、江姫を背負いかけたサノが舞子に言った。

「もう少ししたら自然に目を覚ます。ちゃんと宿主にとって安全な方法で花びらを回収できたからね。英麻ちゃん、みなみちゃん、そして舞子ちゃんのおかげで」

「…私の?」

「そうだよっ。っていうか、すごいよ、若田さん!」

英麻が勢い込んで身を乗り出す。

「あんな大変なことになってたスピカの翼、直しちゃうなんて」

「足立さん」

操縦席から振り向いたみなみも力強くうなずいた。

「すごく安心して操縦できた。今までで一番、って言ってもまだ三回目なんだけど、一番、やりやすかったよ。ありがとな、若田さん」

「服部さん」

舞子は英麻とみなみを見つめる。英麻はすっかり興奮しきりだった。

「ほんとすごかったなあ、氷溶かす時なんて。あんなにすごい整備ができるんだもん。一緒にいてくれたら百人力だよ、若田さんっ。ううん、舞子ちゃん……舞ちゃん!」

「まい…ちゃん?」

舞子が面食らった顔になる。

「そう舞ちゃんっ…あー、さすがに馴れ馴れしかったかな。ごめん」

「う、ううん、あのっ。もし、迷惑でなかったら」

舞子は軽く頭を下げ、照れた笑顔を浮かべた。

「そう呼んでくれるとうれしい…です」

「あっ、ハ、ハイ。えっと、じゃあ…そう呼びます」

英麻もえへへ、と笑って頭を下げた。

「ふうん、舞ちゃんか。いいね、私もそう呼んでいい?」

「もちろん」

やはり照れ笑いの舞子がみなみにうなずいた。

「あれっ、そういえば舞ちゃん、眼鏡がない」

「えっ」

舞子は目元に手をやった。眼鏡なしの黒い瞳がぱちぱち瞬く。

「本当だわ…でも、ちゃんと見えてる。どうして」

「フフフ、それはスカイジュエルウォッチのなせる業なんだな、舞ちゃん」

パタラッシュにリードをつけながらメグロが得意気に答えた。

「実はスカイジュエルウォッチの変身機能には本人の視力を向上させる作用もあってね。変身の間だけって制限つきだけど、その方がずっと動きやすいっしょ?」

「はい」

「タイムパトロールの制服にも着用時限定で同じ機能があるから、視力に自信ない隊員もみんな眼鏡なしで済んでるのさ。かくいう俺もね」

「へえ、ハイテクー」

みなみが感心の声を上げる。

「ただ、中にはどうしても眼鏡の方がいいっていうタイプもいて、そーゆう物好きな奴は超強力な割れないレンズを使った眼鏡をかけてる。特別部隊のワシズやそこのタカツカみたいに」

「いいんだよ、僕はこの方が落ち着くんだから」

少し顔を赤くしたタカツカが言い返した。

「…よおーしっ。タイムエンジニアの舞ちゃんも加わったことだし、残りの時の花びら回収任務、頑張らなくっちゃね!」

英麻は元気よくファイティングポーズをつくって意気込んだ。

「やる気満々じゃん、英麻ちゃん。ああ、よかったわー」

「俺ら結構、心配してたんだぞ。そろそろ回収任務に飽きてたらどーすんだろ、って」

「そんなことにはなりませんよ、メグロさん、カタギリさんっ。私、これからも今まで以上に一生懸命、任務に取り組んでいきます。何てったって…」

熱心な目で英麻は胸に手を組んだ。

「時の花びらを全部集めたあかつきには、あの聖組のみんなに会わせてもらえるんですからッ!」

舞子を除く一同はその場にずっこけた。

「最初の任務の時、オカ司令官と約束したんだもんねっ。ああ、楽しみだわあー。この前の『剣聖華劇』、あれは超よかったけど、布施くんたちの見え方が豆粒サイズだったのがいただけなかった。よりによって双眼鏡を忘れるなんてっ…」

「ひじりぐみ…?」

舞子が珍しく間の抜けた顔になる。

「何とご存じない!?それはいけない、待ってて、舞ちゃんっ。今、私のブロマイドコレクションで説明を」

英麻はスピカのドアを開け、シリウス328に置いたリュックサックに入れてある、聖組専用フォトファイルを取りに行こうと勢いよくかけだそうとしたのだが。

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