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突然、渦巻いた雲と花吹雪に英麻やハザマたち、メビウスの三人、そして江姫があっけに取られる。

白雲とオレンジの花吹雪の先に見えたもの、それはスカイジュエルウォッチの力で変身した若田舞子の姿だった。

英麻もみなみも目を見張る。

「若田さん!?」

「ひょっとしてタイムアテンダントに変身したのか?」

「けど、あれはタイムアテンダントの服じゃないぞ」

ハザマの言う通り、舞子の出で立ちは英麻のタイムアテンダントのユニフォームとも、みなみのタイムパイロットのそれとも違っていた。

見慣れたセーラー服は目が覚めるような空色の、上下が一つになった半袖のワークウェアに変わっていた。洗練されたデザインのワークウェアの襟元には、ペンダントから形を変えたタイムパスポートの白い花が留まり、胸と腰には鮮やかなオレンジの蛍光反射ベルトが光っている。手には厚手の白手袋、足には黒のワークシューズ、そして頭には真っ白なヘルメットが見えた。ヘルメットの正面、そこには英麻とみなみと同じく、金の桜の花飾りがきらめく。

もう一つ。いつもしていた眼鏡は消え去り、黒目の大きな澄んだ瞳がはっきり見えた。

舞子はスピカの正面に立ち、凍りついた翼を見すえる。

なぜか、舞子にはもうわかっていた。どうすればこの翼を、スピカを直してやれるのかを。

「左右主翼、後方垂直尾翼および水平尾翼にダメージあり。各部位を修復、整備すれば再飛行可能…!」

舞子のスカイジュエルウォッチがオレンジの光を放ち、宝玉から何かが飛び出した。

彼女の両手に現れたのは、ペンチとドライバーらしき工具一本ずつ。握りから先端まですべてオレンジ一色で、ほのかに光っている。

舞子は二本の工具を垂直にクロスさせるようにし、ためらうことなくスピカに向かって構えた。

「若田さん、何を…わっ!?」

英麻は目の前の光景に目を奪われる。

柔らかなオレンジの光のリボン。

舞子が手にした工具からオレンジの帯状になった光がいくつもあふれ出る。それらは白く凍ったスピカの主翼と尾翼に瞬時に巻きつき、包み込んでいく。光のリボンにくるまれた翼全体が強く輝いた。

ミシッ、バキバキッと音がした。

「うそ!?」

分厚い氷の層が砕け散る。

砕けた氷の先に、スピカの空色の翼があった。主翼も尾翼もそれまでとまったく変わらぬ姿で、先端まで美しくぴんっと伸びている。尾翼の桜のマークが白く輝いている。

生き返った。

そう英麻は思った。

「若田さん、氷溶かしちゃったぞっ」

「すごいっ。まるで魔法……あ」

みなみと一緒に興奮しかけた英麻は唐突に思い出した。

町工場で見た、舞子の真剣な顔。

黙々と機械を修理していた彼女の表情は、スピカの翼を直した今、この時と同じだった。一途さ、情熱、そして、誇り。それらが強く感じられる。

無理にやらされてたんじゃない。若田さん、自分で心からやりたいと思ってあの時も修理してたんだ。

「どーなってんだ、おい!?いきなりあんなハイテク整備かましちゃって、あの子何者だよ、ハザマッ」

「い、いや、先輩っ。俺に言われてもっ」

「落ち着きなよ、メグロ」

タカツカが、ハザマの両肩をつかんでガクガク言わせかけていたメグロを止める。

「おそらく……スピカの操作盤にあったエンジニアジュエルの力を借りて直したんじゃないかな」

「エンジニアジュエル?」

英麻、それにみなみもタカツカに注目する。

「以前、話したリビングジュエルの一種です。スカイジュエルやパイロットジュエルと同じく、人間さながらの高度な動きができる結晶状のコンピューター。エンジニアジュエルはその中でも機械類の整備を司るリビングジュエルなんです。スピカに備わっていたエンジニアジュエルは通常の整備に加え、機体が損傷した場合に自動修復する役割も担っていました。けれど、今回のダメージはあまりにも大きく、エンジニアジュエルだけでは手に負えなかった。だから」

「スピカの整備ができる潜在能力を持った者をその場で選び出し、整備士役として変身させたってことか。で、それがびっくりなことにニューフェイスの舞子ちゃんだった」

メグロが後を続けた。

「なら若田さんはタイムアテンダントじゃなくってタイム…タイム……ええーっとお…」

必死に考える英麻だが、『整備士』に相当する英単語が出てこない。

「タイムエンジニア(time engineer)―――日本語で表すとしたら時空整備士か」

サノが呟くように言った。

英麻もみなみも驚きを隠せない。

「タイムエンジニア…時空整備士…」

「若田さんにそんな力があったなんて」

「驚きだな…って、まったりしてる場合じゃねえッ」

「英麻さん、みなみさん!江姫を連れてこのまま、回収をっ」

カタギリとタカツカが叫んだ。

「この草地は多少、傾斜もあるけど離陸前の滑走はできる。今度こそスピカを飛ばすんだ!」

英麻とみなみはうなずき、すぐさま動く。

「行くぞ、姫様!」

みなみがむんずと江姫の片腕をつかんだ。

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