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引佐に乗ったハザマと英麻は勢いよく一本の獣道をかけていく。

「ぎゃーっ!うそ、やだ、速いっ、こわいっ。何でこんなにドカドカ揺れるのよおー!?」

引佐が走るスピードは想像以上だった。今までせいぜいポニーしか乗ったことがない英麻はハザマの後ろで見境なく叫びまくる。

「ぎゃあーっ!」

「うるっさいんだよ!おとなしくしてろ、このっ」

こちらはこちらで必死なハザマが手綱を手に振り向きかける。

「よそ見するな、ハザマ!ちゃんと馬と同じ方向見て進め!」

上空から拡声されたサノの声が降ってきた。引佐に二人乗りしたハザマと英麻を、サノ、みなみ、ニコがシリウス328に搭乗して少し後方から追いかける、こうした形で彼らは舞子たちの元へ急いでいた。

再び上空からサノの声が聞こえる。

「ノートパソコンの解析結果によれば、この一本道をずっと行った先に江姫と舞子ちゃんはいるはずだ」

「了解です!よかった、それなら二人とも見つかる…っておい、どうした!?」

「きゃああっ」

それまで力強く走っていた引佐ががくんっと失速し始める。みるみるスピードが落ちていき、ついに立ち止まってしまった。ハザマはイライラした様子で引佐から降り、英麻も後に続いた。

「何だよ、ったく。ちゃんと走ってくれないと」

文句を言いかけたハザマが小さくうめいた。引佐の後ろ足付近にかがみ込む。

「こいつ、ケガしてる」

「えっ」

英麻ものぞき込んでみると、右の後ろ足の一部が腫れ上がっており、わずかに血がにじんでいた。

「メビウスの奴らにやられたのかもしれない。これ以上、こいつを走らせるのは無理だ」

「痛そう…大丈夫かな」

「これぐらいならサノ先輩の手当てで治してもらえるはずだ」

ハザマは荒く息をする引佐の頭にそっと手を置いた。

「ごめんな。早くに気づいてやれなくて」

こんな状況にも関わらず、英麻は心の中にじんわり温かさが広がるのを感じた。

ああ、そうだ。こいつ、根は優しいんだよね。最初の任務の時からそうだった。

その温かさは舞子たちを思う不安で重くなっていた英麻の心に、少しだけ安心感を与えてくれた。

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