表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空守護士タイムアテンダント  5 じゃじゃ馬姫と三番目のクルー    作者: 夜湖
第五章 許されざる善意、踊る珍騒動
31/50

「わっ。びっくりしたあ」

何気なく振り返った背後には、十人ほどの現地人が等間隔に行儀よく並んでいた。彼らは皆、安土城の人間らしかったが、年齢、性別、着ている着物の種類もばらばらだった。

「何だろ、この人たち…あのおー、何かご用でも」

英麻は次の言葉を飲み込んだ。

ダアンッと迫力あるジャンプ。ぴったり息の合った振り付け。

現地人たちが踊りだしたのである。

一瞬、英麻はミュージカル『剣聖華劇』の舞台に引き戻されたのかと思った。歌こそなかったが、今にもバックミュージックが聞こえてきそうな勢いで彼らは踊る、踊る、踊る。勇壮な黒ひげを生やした家臣から日焼けした顔の馬番まで、彼らの両手、両足、そして体全体から次々と、あらゆる種類のダンスが繰り出される。

英麻は大口を開けたまま、彼らの踊りに見とれていた。

乳母や侍女をお姫様だっこで抱きかかえた男たちが華麗にターン、最後は全員、一糸乱れぬ決めポーズでビシッと締める。

一瞬の沈黙の後、始めはぱらぱらと、やがて盛大に拍手の音が響いた。英麻はもちろん、みなみや舞子たち、ハザマさえもが任務を忘れ、熱心に拍手してしまうほど、現地人たちの踊りのクオリティは高かった。

「すごすぎる…」

ハザマが呟いた。英麻はまだ拍手しながら興奮気味にまくしたてる。

「すごいっ!何なの、あの超キレッキレのダンスは。さっきのブレイクダンスなんて聖組のそれに匹敵するくらいよっ。いやー、いいもの見れたわー」

「おお、同感っ!……ん?」

うなずきかけたみなみが英麻の言葉を聞きとがめる。

「ちょっと待った。どうして安土·桃山時代の人たちがブレイクダンスなんて知ってんの?」

「えっ」

「確かに妙だな」

ノートパソコン片手にサノが怪訝な顔になる。

「ブレイクダンスだけじゃない、あの現地人たちが踊った踊りの中には、まだこの時代の日本に存在しないものがかなり混じってる。ヒップホップにジャズダンス、フラメンコにフラダンスにラインダンス、それから、うわっ」

現地人ダンサーの一人にぶつかられ、サノがよろけた。

彼らのダンスは一段とパワーアップしていた。人数が倍以上に増え、動きがダイナミックになっている。いや、ダイナミックどころではない。現地人たちは激しい動きで英麻たちの近くを舞い踊り、ほとんど体当たり同然の形でダンスを繰り広げていく。いつの間にか英麻たちばらばらになりかけていた。

「ヒエエッ。これじゃ、押しつぶされちゃうヨオー!」

「なあ、さすがにちょっとやばくないか?」

子ブタ型のニコを抱えたみなみが叫ぶ。

「くそっ。こんな状況じゃ、落ち着いてパソコンで江姫をさがせやしない。おい、あんたらいつまで踊る気だよ!?」

ハザマが地団駄を踏んで怒鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ